監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第4回)広告よりクチコミを信じる時代

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。
今回は、本書がクローズアップされる社会的な背景について、お話します。

アンバサダーマーケティング4-resized-600

■広告よりクチコミを信じる時代。広告より友人の意見が参考になる時代。

興味深い調査結果をご紹介します。
まずはニールセンによって、56カ国、28,000人以上を対象に実施され、2012年4月に発表された「広告の信頼度調査」(※1)です。

この結果を見ると、世界の消費者が信頼する対象として第1位にあげたのは広告ではなく、「友人や家族のおススメ」でした。これは92%が信頼するという結果となり、2007年の調査よりも18%増加していました。

続いて信頼度の第2位になったのが、「消費者レビュー」でした。こちらは70%が信頼するという結果となり、2007年の調査よりも15%増加していました。

一方、マス広告へ目を向けると、世界の消費者のマスメディアへの信頼度が軒並み低下しているのがわかりました。
具体的な数字をあげると、信頼度はそれぞれ、〈テレビ広告47%、雑誌広告47%、新聞広告46%〉と、50%を切っていました。しかも2009年から2011年の2年間では、〈テレビ広告 -24%〉、〈雑誌広告 -20%〉、〈新聞広告 -25%〉と、それぞれの信頼度は大きく低下していたのです。

この調査から、「消費者は急速にクチコミを信頼するようになり、広告を信頼しなくなってきた」ということが伺えます。その背景には、おそらくソーシャル・メディアの普及と発展があるのだろうと想像することができます。

また、上記のデータと、2009年4月に同じくニールセンが実施した信頼度の調査結果(※2)を比べてみると、マスメディアであるテレビや雑誌広告、新聞広告だけではなくて、ブランド(企業)サイトに於ける信頼度も、70%から58%と急減しているのです。

これは何を意味するのでしょうか・・・。もちろん、これだけでは詳細は不明ですが、要するに企業から発するメッセージそのものが消費者からあまり信頼されなくなってきたのではないか、ということが推察できます。

 

■ますます消費者主役の時代へ。

アメリカのニュース雑誌「タイム」が、その年に最も活躍し話題になった人物を決定する「パーソン・オブ・ザ・イヤー(Person of the Year)」で、「You(あなた)」を選んだのは2006年でした。
当時は2003年に設立された「MySpace」が、アカウント数1億を突破して話題に。さらに2004年に設立されたFacebookは2006年に一般公開され、SNSが一躍注目された時代背景がありました。同じくTwitterも2006年7 月からサービスを開始します。また映像共有の分野ではYouTubeが2005年に設立されますが、公式サービスの開始は12月からなので、実質的なブレイクは2006年といえます。

いかがでしょうか。このように、2006年はまさに歴史に名を刻む、時代の転換期だということがわかります。(参考までに書きますが、私が制作した日本初のバイラルCM「カプコン 極魔界村」も2006年の6月公開です。当時は時代のうねりを感じ、今、このタイミングしかないと思ったものでした。やはり時代の転換期は2006年だと言える所以です)

その2006年から今年で7年。新しいメディアと情報発信のあり方は完全に普及し、まさに名実共に消費者が情報を発信する、消費者主役の時代になった感があります。いや、今までも広告会社は昔から消費者目線を大切にすると明言してきましたが、今回のポイントは消費者目線を大事にするというレベルではなく、本当に消費者が主役になる時代がやってきたということなのです。

消費者が情報発信する時代はこれからも、ますます進化を遂げるでしょう。しかも、ブランドのファンが発信する情報は、他の何よりも「信頼力のある情報」であることが明らかになっています。この傾向はますます拡大し、決して縮小することはないと思われます。

「では具体的にどうしたらいいのか」という指南書が、本書「アンバサダー・マーケティング」というわけです・・・

(※1) Global Consumers’ Trust in ‘Earned’ Advertising Grows in Importance (Nielsen/2012年4月)

(※2) Global Advertising: Consumers Trust Real Friends and Virtual Strangers the Most (Nielsen/2009年)

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2013年11月21日


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