PCデポ、DeNA…炎上騒動が拡大してしまう企業に共通する特徴とは?

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炎上騒動の起点は個人の発信

ソーシャルメディアの普及により、消費者の怒りがネット上で可視化され、「炎上」と呼ばれるような騒動になるケースが増えてきています。
 
特に2016年はネット炎上の歴史のなかで、社会的にインパクトが大きかった騒動が複数起こった年だと思います。なかでも、その代表的な事例がPCデポとDeNAによる2つの炎上騒動でしょう。

PCデポの炎上騒動は、1人のツイッターユーザーが起点となって炎上が始まり、そのユーザーのPCデポ訪問に同行したライターのヨッピーさんのYahoo!ニュースに寄稿した記事などで騒動がさらに拡散し、結果的に非常に大きな騒動となりました。

参考:PCデポ騒動で考える、法律よりも厳しい社会の目

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一方でDeNAの方も、1人のライターが提示した医療メディア「WELQ」への問題提起が起点となって始まり、複数のライターやメディアが連続してDeNAのメディア運営の問題点を指摘し続けたことで、最終的にはネットメディア業界全体を揺るがすような大きな炎上騒動となりました。

参考:DeNAコピペメディア騒動の背景にある5つの病の連鎖を考える

この2つの騒動では、まず炎上の起点が個人の発信によって始まっている点が特徴的と言えます。

従来であれば、こうした問題提起やクレームは、お客様サポートセンターなどに電話で指摘され、企業側が対応することで収束する、もしくは企業側が対応をしないことに対してクレームをした側が、不満を溜め込みつつも泣き寝入りをする、というケースが多かったと思われます。

それが、この2つの事例においては、個人の指摘であってもネット上やメディアに注目されると、大きな話題を呼び、社会現象になりえることが、結果的に証明されました。

PCデポの株価は騒動をきっかけに騒動発生前につけた高値の半値以下にまで下がってしまい、現在も回復していません。DeNAの株価も騒動発覚後から下がり続けて、現在でも昨年の高値から40%近くも下がってしまっています。

炎上のきっかけは1人の個人の発言だったかもしれませんが、その影響は非常に大きなものになってしまったわけです。さらに、この2つの騒動で象徴的だったのが、炎上が発生した初動での対応に失敗してしまった印象が強い点です。

PCデポの炎上に関しては、ユーザーへの対応が二転三転した経緯があるようですし、DeNAの炎上に関しては、当初のボヤの段階でのDeNA側の対応が不十分な面が多かったことが、その後の大きな炎上への布石となってしまいました。

炎上騒動が拡大してしまう企業の共通点

こうした炎上騒動が拡大してしまう企業に共通する特徴として想像されるのが、顧客視点ではなく企業視点、つまり企業内部の論理で物事が決められている印象が強いという点です。

PCデポの炎上騒動においては、問題提起をしたツイッターユーザーの認知症の父親に、個人としてはおよそ不釣り合いな契約を推奨していたことが問題になりました。それにも関わらず、PCデポ側は契約したのは顧客自身であるため違法ではないという姿勢を崩さず、強気な対応を続けていた印象があります。

ただし、一般的な顧客視点で考えたら、高齢者である個人に10台分のサポート契約を行うというのは誰がどう聞いても不適切で、それが法的に問題ないと主張する企業に対して良い印象を持つことはできないわけです。

DeNAの炎上騒動においても、初期の頃に問題になったのは、医療メディア「WELQ」における医療関係の記事の問題が中心であり、DeNAが運営するメディア全ての問題ではありませんでした。ただ、DeNA側がその場しのぎの中途半端な対応を続けてしまった印象があります。

おそらくDeNA側としては、所詮一つの記事への特殊な問題を指摘されただけであり、一つひとつ改善していけば許されると思い込んでいたのでしょう。一般的な顧客視点で考えれば、そのDeNAの対応姿勢こそが問題視されていると気づくべきだったのですが、報告書を見る限り、そうした外部の声に耳を傾ける余裕がない状態になっていたようです。

実は、こうした企業内部の論理で物事が決められてしまうことが炎上騒動を拡大することにつながるのは、何もネット炎上事例だけに共通する特徴ではありません。

昨年から悪いニュースが次々と連鎖して、過去最大の赤字を出すことになってしまった東芝においても、社内目標を達成するための「チャレンジ」と呼ばれる厳しいプレッシャーが不正会計の背景にあったことが明らかになっています。同じく昨年話題になった三菱自動車の燃費不正問題においても、社内の厳しい燃費目標を達成するためにデータの改ざんが常態化してしまっていたことが明らかになっています。

参考:三菱自動車や東芝の不正騒動から学ぶべき、大企業病の恐ろしさ

顧客視点で考えるのではなく、社内の論理に盲目的に従ってしまうこと自体が、実は不祥事や炎上を生み出す温床になっていると言えるのです。

逆に言うと、炎上騒動を乗り越えるためにも必要なのは、顧客視点での対応を真剣に考えることだと言えます。

まるか食品がペヤングの異物混入で炎上してしまった時、同社は製造ラインを止めて商品の販売を中止し、10億円以上のコストを投下して製造ラインを一新するという、顧客視点で見てもビックリするほどのすごい対応をしました。

その結果、ペヤングファンは販売中止の間も離れることなく、販売再開を待ち続け、再発売の折には品切れになるほどの大きな話題になっています。

炎上騒動が拡大してしまうのは、炎上の種であるボヤ騒動の段階で、顧客視点で見た場合の顧客が期待している対応を超える対応ができるかどうかにかかっていると言えます。その段階で企業の論理を優先した対応をしてしまうと、ボヤが延焼して本格的な炎上騒動になってしまうのです。

そういう意味で、前述の炎上した企業が顧客からの信頼を回復できるかどうかも、今後、顧客の期待を超える対応をし続けることができるかどうかにかかっていると言えるでしょう。

今は他人事として見ている炎上事例も、何かのきっかけで皆さんの会社で起こるかもしれません。ぜひ、その際に顧客視点で対応を考えることができるかどうか、今から考えてみてください。

※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。

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2017年4月5日


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