【ソーシャルメディア活用(7)KDDI】「お客様のコメントに励まされています」

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今回は、「2012年ソーシャルメディア活用企業調査」(アジャイルメディア・ネットワーク=AMN調べ)でランキング9位に選ばれたKDDIのソーシャルメディア活用について、コミュニケーション本部宣伝部WEBコミュニケーション室の丸田功さん、松澤絵美さんにお伺いしました。

WEBコミュニケーション室がオウンドメディア戦略を統括管理

――ソーシャルメディアの活用を始めたきっかけをお聞かせください。

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松澤 もともとは2009年ごろから期間限定のツイッターアカウントをいくつか立ち上げて、キャンペーンの盛り上げのためにソーシャルメディアを利用していました。常設のアカウントとしては、私たちの所属している宣伝部ではなく、2010年5月に広報部が「@kddipr」というツイッターアカウントを開設したのが最初でした。このアカウントはもともと通信業界の記者の方や、通信業界への興味が深い方々へ向けて情報を発信するためのツール、という位置付けで始まったものです。

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(ソーシャルメディアのKDDI公式アカウント)

丸田 宣伝部が「WEBコミュニケーション室」としてソーシャルメディアの全体管理を始めたのは2011年4月からです。それまでには各サービス担当が個別にツイッターアカウントを立ち上げて運用していたり、キャンペーンツールとして期間限定で使っていたりして、全体的な統率がとれていませんでした。全体管理を行う一方、ほぼ同じタイミングで5月にはauのフェイスブックページを開設し、WEBコミュニケーション室で運用をすることとなりました。

――もともと広報ツールとして使われていたツイッターを企業として運用しはじめた理由をお聞かせください。

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丸田 これはソーシャルだけの話ではないのですが、Webの価値は消費行動の中で非常に大きな役割を果たすようになっています。これまでKDDIではソーシャルメディアを各事業部ごとに展開してきましたが、スピーディーな立ち上げが可能というメリットの一方、そうして立ち上がったいくつものアカウントを全社的に見た時に、管理ができているのか、という課題もありました。

ソーシャルメディアも含めたオウンドメディア全体の戦略を担うために設立されたのが、われわれの所属するWEBコミュニケーション室です。これまでソーシャルの展開はキャンペーンや事業部ごと行っていたものを1つの部署で全体管理すると同時に、KDDIの「顔」を務める意味でauのフェイスブックページの運用も開始しました。

――ソーシャルメディアの運用はWEBコミュニケーション室で一括して行われるのでしょうか。

丸田 ソーシャルメディアに限らずWebサイトも含めて1カ所にまとめよう、というのがWEBコミュニケーション室のミッションですが、すべてのアカウントを統合したり、1つの部署ですべて運用するということではありません。KDDIという会社は1つですが、ソーシャルメディアではお客さまそれぞれの趣味嗜好が非常に重要視される場ですから、それぞれに特化したアカウントがあるべきですし、そのためにも企業としてのメインアカウントと、趣味嗜好にあったアカウントを個別に展開していくほうがいいと考えています。

WEBコミュニケーション室では、新たなアカウントの立ち上げについて申請を受けると、どのように運用すべきかという議論を重ねた上でアカウントの承認を行ったり、その後の運用についてもアドバイスを行うことはあるものの、実際の運用そのものは各部署に任せています。WEBコミュニケーション室が自ら運用しているアカウントは、auのフェイスブックページと3月26日に開始したばかりのツイッターアカウント「@au_official」の2つですね。

アカウント新設で「au」ブランドも前面に

――「@kddipr」というツイッターアカウントがある中で、新たにツイッターアカウントを立ち上げたのはなぜでしょうか。

松澤 すでに広報のツイッターアカウントは活性化していたので、新たに立ち上げる必要もないのでは、ということで今まではツイッターアカウントを立ち上げていなかったのですが、弊社ではKDDIという社名だけでなく、auという大きなブランドも持っています。お客さまによってはauのほうが馴染み深いという方もいらっしゃる中で、通信に興味がある方はもちろん、さほど通信には興味のない一般のお客さまにも喜んでいただける情報をやわらかめに発信できたら、という経緯で開始しました。

――WEBコミュニケーション室は何人で運営されているのでしょうか。

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(左から:丸田功さん 松澤絵美さん)

松澤 全体では12人ですが、ソーシャルメディア担当は丸田と私の2人だけですね。

丸田 運営自体は2人ですが、週に1度は松澤が編集長という立ち位置で編集会議を行い、関係部署の担当者が集まり、投稿内容やどのような投稿がいいのかという話し合いを行うようにしています。

――各部署がキャンペーンでソーシャルメディアを利用したいという申請があった時に、却下されるパターンもあるのでしょうか。

丸田 もちろんありますが、1つの軸にしたがってすべてを決めているということはありません。提出された企画書をしっかり読み込み、それが果たしてソーシャルメディアを使う必然性があるのか、単に新しいツールを使いたい、というだけではないのかという点を確認した上で個別に判断しています。

松澤 最近はほとんどありませんが、以前は「何だから新しそうだから」という理由だけでソーシャルメディアを使いたい、という申請もありました。そういう場合は本当にソーシャルメディアが必要なのかを担当者に確認した上で使っていただくようにしますし、場合によっては申請を却下することもありました。

――そうした判断はソーシャルメディアのリテラシーが重要になると思いますが、お二人は今までソーシャルメディアを活用されていたのでしょうか。

丸田 宣伝部では、2009年にツイッターを、2010年にはフェイスブックを全員で使って、自ら体感するようにしました。いざ使い始めると、いつの間にか便利だなという実感が沸いてきて、そのまま使い続けていたらいつの間にかいまのような立場になっていました。

「笑顔が足りない」撮り直しも

――会社を代表して社外へ情報発信することに不安はありませんでしたか?

松澤 毎日緊張していますよ。

丸田 投稿する時は何度も何度も確認します。あまり慣れるものではなく、毎回毎回緊張しますね。

松澤 細かい点、たとえば句読点をつける位置でも「このほうが読みやすいのではないか」と議論しながら毎日投稿していますね。写真も「笑顔が足りないから撮りなおして来い!」って言われたり。

――オフィシャルアカウントで投稿する内容はどのように決まるのでしょうか。

松澤 先ほどお話した編集会議などの場で、いろんな部署から「こういう新しい取り組みをやります」とか、「エリア拡大情報を投稿してほしい」といった情報をいただくので、全体のコミュニケーション戦略を鑑みて内容を取捨選択し、スケジュールを調整し、オフィシャルアカウントで投稿しています。

――ソーシャルメディアでオフィシャルアカウントを運用してみて、お客様の反応はいかがですか?

松澤 取り上げる話題によってすごく反響をいただくこともあれば、一方でまったく反応がなかったり、厳しいお言葉をいただくこともあります。先日は「au Wi-Fi SPOT」のスポット数が10万を突破した、という情報をフェイスブックに投稿したところ、大変多くの反響をいただいてWi-Fi SPOTへのお客様の関心の高さを実感しました。そうしたお客さまの考えがとてもよくわかるようになったのがソーシャルメディアの良いところですね。

一方で、ふだんあまりお客様の目に触れることのない、ネットワーク運用現場の担当者の紹介をしたときなどは、「陰でこんな取り組みをしていたなんて知らなかった」「頑張れ!」など、励ましのお言葉を多くいただくことがあります。ふだんお客様から直接そういったお言葉をいただくことがないので、コメントを見た担当者は本当に喜びます。ふだん目にすることのないauの一面を紹介することで、お客様とauの距離を縮め、また社内のモチベーションアップにも使っていけたらと思っています。

――運用していて困ったことはありますか?

松澤 お客さまからいただくコメントの中には、好意的なものもあれば、厳しいご意見をいただくこともあります。必要に応じてお客さまセンターの担当者や、店舗の担当者と連携して対応しています。

丸田 また、ツイッターに関しても「ソーシャルリスニング」という形で、CMの反響や新製品発表会の反応も調査していますし、フェイスブックにいただいた声も役員との打ち合わせでレポートとして提出していたりと、お客さまからいただいた声は関連部門に展開して共有しています。

製品発表会のライブ配信に大きな反響

――KDDIは新製品発表会のライブ中継も積極的に行っていますが、取り組み始めたきっかけは。

丸田 ライブ中継の第1回はちょうど我々が担当した施策で、2010年10月に「IS03」という端末を発表する際に実施しました。「ソーシャル上で話題にして欲しい」という狙いもあったのですが、当時我々はスマートフォンで他キャリアよりも出遅れていたこともあり、IS03という端末をきっかけに「auが逆襲を始めたよ」という話題にして欲しい、という考えからUsteramのライブ中継を実施しました。

当時は最初の10分間で回線がパンクしてつながらなくなり、端末発表ギリギリのタイミングでなんとか復旧した、ということもありましたが、今はいくつものノウハウを得ることで当たり前のようにライブ中継を実施できています。

――期待通りの話題性はありましたか?

丸田 ありましたね。さらに発表会に関する投稿を見ていくとリアルタイムの反応も確認できるため、プレゼンテーションの内容や資料の良し悪しといった効果検証という面でも役に立っています。お客さまに伝えるだけではなく、自分たちの反省材料にもなるという点では便利ですね。

――発表会の参加者だけに見せていたものをすべてライブで見せる、ということに怖さはありませんでしたか。

丸田 もう麻痺しちゃったのかもしれませんね。昔は神経質になっていたところもありますが、文句を言われるのは当たり前ですし、むしろ意見を言ってもらえるのはとてもありがたいことです。発表会のプレゼンテーションを行う社長の田中(孝司氏)の場合、プレゼンテーションの内容だけでなく服装にまでコメントをいただいたりして、それを本人に伝えたり、といったこともありますね。

ツイッター、フェイスブックに集中

――今後活用してみたいソーシャルメディアはありますか?

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(auのフェイスブックページ)

丸田 今のところはツイッターとフェイスブックを活用していますが、それぞれ別の目的で運用しています。フェイスブックで大事にしているのはお客様との関係性で、プロモーション要素はもちろんあるものの、そうでない部分もできるだけ大事にしています。

普段は大きなニュースにならないような話題も、積極的に投稿することで「auってこういう人たちが働いているんだ、陰でこういうことに取り組んでいるんだ」というのを理解してもらえます。これまでもエリア構築や通信品質向上の話題はそれほど語られることもありませんでしたし、ネットワークセンターのスタッフがフォーカスされることも通常業務ではあまりないのですが、そうしたスタッフの業務を紹介し、お客様からねぎらいやお褒めの言葉をいただくことで、スタッフのモチベーションにつながっている面もあります。そういう点でもフェイスブックは継続して活用していきたいですね。

一方、ツイッターはもう少しいろいろな使い方ができるのでは、と感じています。先日「フェイスブックはホームパーティーみたいなもので、ツイッターは知っている人も知らない人もみんな参加するお祭りみたいなもの」という例えを聞きました。ツイッターでは情報発信ツールとしての役割はもちろん、みんなを楽しませるような企画を考えてみたいですね。

松澤 フェイスブックもツイッターもまだ手探りの状態ですので、他社のアカウントも見ながら、徐々にKDDIらしさ、auらしさを出していきたいと思っています。

丸田 ソーシャルメディアは他にもたくさんのサービスがありますが、まずはツイッターとフェイスブックを中心に実績を積み重ね、傾向を分析していきたいですね。

――インタビュー雑感
ソーシャルメディア上で発信されたお客様の声を関連部門に共有したり、ユーザーのソーシャルメディア上の反応を見ながら、効果検証を行い次回の施策に活かすというKDDIの姿勢には感心しました。今後はソーシャルメディアを単なる情報発信のツールとして活用するだけではなく、お客様の声の傾聴の場の一つであると捉え、企業の活動に活かしていくことの重要性がますます高まっていくと感じました。(アジャイルメディア・ネットワーク)

インタビュー担当 AMN 甲斐祐樹、高柳慶太郎

次回(5月14日)は良品計画です。

※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。

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2012年4月16日


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