監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第10回) アンバサダー・マーケティング成功の5つのカギ ①旗振り役

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。
本書は著者ロブ・フュジェッタ氏の会社ズーベランスでの実績や経験をもとに書かれています。今回は著者が取り組んだ何百というアンバサダー・プログラムでの経験をご紹介します。

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■成功の秘訣は、旗振り役の存在

本書によれば、効果的なアンバサダー・プログラムには5つのカギがあるそうです。
「人」(①アンバサダー・マーケティングの旗振り役、②有能な管理者)、「プロセス」(③計画と④持続力)、「テクノロジー」(⑤アンバサダー・システム)です。その中で一番重要なのは何と言っても①でしょう。今回はその旗振り役に焦点を当てたいと思います。

この連載をお読みの方は企業の担当者が多いと思いますが、みなさんこそ新しいマーケティングを実践すべく企業の中で奮闘している一方、同時に成果も求められている、まさにこの立場の方だと思います。

もちろん本書に書かれているのは環境や状況も違うアメリカでの成功事例ばかりですので、理想論に聞こえるかも知れません。しかし先行している成功事例から学べることは多いはず。今後の参考になり、勇気が湧いてくるような内容が本書にはたくさん紹介されています。以下は本書からの抜粋です。

①旗振り役
最初のカギは、アンバサダー・マーケティングの旗振り役、すなわちアンバサダー・マーケティングのアンバサダーがいることだ。おススメの威力、クチコミの威力にとことんほれ込んでいる人物である。
旗振り役はマーケティングのイノベーターであり、リスクテイクを恐れない。アンバサダーが会社にとってどれほどすばらしい効果をもたらすかを見通す力がある。そして上司や同僚にアンバサダー・マーケティングを売り込もうとする。

CDWのソーシャル・メディア担当マネージャー、ローレン・マキャドニーは有能な旗振り役の好例だ。(略)「アンバサダーとの関係を構築して彼らに活躍してもらうことは、その場限りの戦術ではないと強く思っているの。これは一時の流行ではなく、マーケティングの未来よ。しかも今まさに現実になろうとしているの」とマキャドニーは語る。

■誰が旗振り役になるのか
最も好ましいのは、CEOが旗振り役になることだ。(略)実際にはマーケティング担当の幹部(CMOやマーケティング担当シニアバイスプレジデントなど)が旗振り役になることが多い。中小企業では特にそうである(略)
予算の権限があれば、営業担当幹部やゼネラルマネージャー、オペレーション担当幹部なども旗振り役になれる。
大企業ではディレクターあるいはマネージャークラスが旗振り役になることもあるだろう。(以下、略)

■旗振り役の役目
旗振り役の役割はきわめて重要だ。

  • アンバサダー・マーケティングの重要性や意義を積極的に宣伝、支持、推奨し、組織に投資を促す。
  • アンバサダー・マーケティングに予算や人材を確保する。
  • 問題が発生した時に解決する。
  • 企業の上層部からの支持を取りつける。
  • マーケティング・チームをまとめ、任務に集中させる。
  • アンバサダー・マーケティングに関わる重要な意思決定の場にすべて出席する。

プロジェクト・マネジメントの世界では「旗振り役がいなければプロジェクトは成功しない」と言われる。有能な旗振り役がいなければ、アンバサダー・マーケティングは失敗に終わる可能性が高い。

■旗振り役がいなくなると……
旗振り役が退社したり、担当者が変わったりするだけで、すばらしい成果をあげていたアンバサダー・プログラムが一気にしぼんでいくケースをいくつも見てきた。
アンバサダー・マーケティングによってネット上の評価が上昇する、何千件という質の高い紹介客やクリックが発生する、売り上げも向上する、といった目覚ましい成果をあげていた会社で、旗振り役がいなくなるだけでプログラムが空中分解し、何も残らないというのは本当に残念なことだ。
本当に有能な旗振り役は、自らも去った後もアンバサダー・プログラムが継続されるように社内にアンバサダーを大切にする文化を醸成するものだ。

以上、本文からの抜粋ですが、いかがでしょうか・・・。

熱量の高いファンに着目するアンバサダー・マーケティングの実践は、実は旗振り役個人の熱量の高さやパワーに大きく依存することに驚きを隠せません。しかし考えてみれば、いつの時代も、どんな状況でも、物事を動かしていくのは、個人の情熱だったことに気づけば、この新しいマーケティングの取り組みも例外ではないということでしょう。

ソーシャル・メディア時代の最先端のマーケティングが、実はとても人力だということ。そして、アンバサダーを大切にすることを「企業文化」と指摘する視点が、大変おもしろいと思います。

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社


よろしくお願いいたします。

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藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2014年3月19日


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