ネットに情報が溢れているからこそ、直接「会う」ことに価値がある
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今回のゲスト
愛澤 健志(あいざわ けんじ)
ロイヤルカナン ジャポン e-business & CRM リレーションシップ マーケティング エグゼクティブ
2003年より仏化粧品会社ラグジュアリ部門にてデジタルマーケティング、CRM、セールスプロモーション等に従事。2013年より現職。犬と猫の健やかな一生の実現に向けて、ペットオーナーとの関係性づくりやペットライフに必要な正しい知識の啓発等を担当している。関連して、コミュニティ開発、EC開発、イベント企画・運営等にも携わる。
企業理念の実現が最優先。そのために何ができるかを追求。
藤崎:早速ですが、アンバサダーを活用したマーケティングを始めたきっかけを教えてください。
愛澤:当たり前のことですが、犬や猫は自分で健康の管理をすることができません。健康管理をするのはペットオーナーに他ならないのですが、個々の犬と猫の健康に必要なケアは、年齢、品種、サイズなどによって異なっているため、その管理にお悩みの方も少なくないのです。
こうした現状を踏まえ、私たちロイヤルカナンが培ってきた犬と猫についての専門知識をペットオーナーの皆さまへお役立ていただき、一頭でも多くの犬と猫の健康に貢献したいと考えたのが、開始したきっかけです。
ロイヤルカナンは「すべては犬と猫のために」という価値観にもとづき、犬と猫の健康を最優先に考えたフードづくりを続けているペットフードメーカーです。私たちのフードづくりは、1頭でも多くの犬と猫に健康でいて欲しいという私たちの強い思いと これまで培ってきた犬と猫に関する深い専門知識や経験などに支えられています。それは、日々獣医師や栄養学者が一丸となり、情熱をもって取り組み続けている研究の賜物です。この情熱と知見を生かして、活動の輪をペットオーナーの皆さまと広げることによって、より多くの犬と猫の健康を一緒にめざしたいと考えたのです。
藤崎:なるほど。ロイヤルカナンはペットフードメーカーですが、それ以外の知識や経験でもペットオーナーのお役に立とうと。
愛澤:はい。多くのペットオーナーの皆様は、大切な愛犬、愛猫のために毎日気を配っていらっしゃいます。そうした皆様のためにできることは何かを真剣に考えました。
藤崎:でも、なぜアンバサダー・プログラムだったのですか?企業の知見を活かす手法は、実はたくさんありますよね?例えば動物病院をメディアにしたり、冊子やインターネットコンテンツをつくるとか、広告を打つとか。
愛澤:インターネットが普及し、情報があふれている今だからこそ、ペットオーナーと直接、話ができることに価値があると考えています。
(愛澤 健志=ロイヤルカナン ジャポン e-business & CRM リレーションシップ マーケティング エグゼクティブ)
愛犬や愛猫と過ごす時間はとても楽しく、かけがえのないもの。その時間を守るために、日頃多くのペットオーナーの皆さまが、愛犬・愛猫の健康に本当に必要なものは何か、常に追い求めていらっしゃいます。
インターネットが普及している今日では、ペットの健康に必要な知識は検索をすればすぐに大量の情報を手にすることができます。しかしインターネットで検索できる情報は実に千差万別です。ある一つの事に対して、肯定的な意見があったり、真逆の意見があったり。
つまり、ペットオーナーの皆さまの目線で考えると、どの情報が正しいのか迷う状況があるわけです。時にセンセーショナルな見出しや内容だけに目を奪われてしまうことがあるかもしれません。実際のところ、お客様の皆さまから、何を信じるべきか分からないというご意見を耳にします。
藤崎:なるほど。インターネットの検索でなんでも出てくる時代だからこそ、企業から本当の情報を伝えることや、ユーザーと直接コミュニケーションする重要性を感じたというのは、とても説得力がありますね。
愛澤:それがひとつの大きな理由です。
他方で、私たちロイヤルカナンのことをもっと知ってもらいたいという気持ちもあります。私たちにはペットオーナーの皆さまへ伝えたいことがたくさんあります。しかし本来伝えたいことが正しく伝えきれていません。
例えばロイヤルカナンのフードや考え方に関してたくさんのご意見をインターネット上で拝見します。正しくご理解をいただいているものもあれば、事実とは異なる誤解として伝わっていることも実はたくさんあります。
こうした現状を踏まて、ペットオーナーの皆さまにロイヤルカナンの犬と猫の健康に対する考え方や、健康の実現のために私たちがどのような思いやこだわりや情熱をもって日々取り組んでいるかをできる限り言葉を尽くしてお伝えしていきたいのです。
藤崎:確かにそれらは従来のマスマーケティングでは難しいですね。
まだ2年。長期的な視点に立って考えている。
藤崎:次に社内の説得について教えてください。アンバサダー・プログラムは顧客と一緒におこなう活動ですが、まだ新しい試みですので、社内の承認を得るのは苦労したのではないでしょうか。
愛澤:今のご質問に対しては、期待外れな答えになってしまいますが、実は特に大きな障害はありませんでした。
逆に、ロイヤルカナンが掲げるビジョンや、目指すゴールに合致するのであれば、ぜひとも試すべきだということになり、当初から前向きに取り組めたことを記憶しています。
藤崎:それは驚きました。ファンとのリレーションの大切さは理解されつつも、なかなか承認されないというのはよく聞く話です。
愛澤:私たちロイヤルカナンは、アンバサダー・プログラムに限らず、すべてにおいて「犬と猫の健康」に貢献するにはどうしたらいいのか、という価値観が重視されます。今回の活動もロイヤルカナンの価値観に基づく一つのアクションと捉えていますので、反対する理由は存在しないのです。
(藤崎実=アジャイルメディア・ネットワーク/クリエイティブディレクター)
藤崎:企業のミッションがはっきりしていて、ブランドのポリシーと施策の意義が合致しているんですね。理想のアンバサダー・プログラムかも知れません。具体的にはどのようなことをしているんですか?
愛澤:取り組みの頻度はまだまだ限られておりますが、アンバサダーの皆さまに直接お会いする形式の限定イベントを開催しています。主にイベントの中では、犬と猫の健康に関しての悩み・疑問・ご不安な思いをお持ちのお客様の気持ちに応える栄養学的知識や、私たちロイヤルカナンの取り組みや考え方などについてお伝えさせていただいています。
そしてお伝えした内容の中で犬と猫の健康に役立ったことや新しく発見したことなどを、アンバサダーの方にSNSなどで率直なご感想と共に情報発信していただいています。SNSを通じて発信された率直な声がその他のペットオーナーへ広く伝わり、最終的には一頭でも多くの犬と猫の健康に役立てていただくことを願っているのです。
その他にも、ロイヤルカナンがこだわりを尽くしたフードをお試しいただくなど、単に犬と猫の健康に関する知識だけを得ていただくだけではなく、体験を通じた理解を皆さまにしていただいています。
藤崎:先ほど「ネットに情報が溢れているから、企業から正しい情報を直接伝えることが大切」というお話がありましたが、そのひとつが、フェイストゥフェイス、ということなんですね。
愛澤:はい、そうです。もちろん私たちはペットフードを介してお客様とつながっているわけですが、直接お会いすることも重要だと考えます。アンバサダーの皆さまのお話は参考になることばかりですので、私たちは大いに刺激を受けています。
藤崎:なるほど、それは素晴らしいですね。さらにはユーザーと企業の交流の場にもなっているということですが。
愛澤:フードへのこだわりや背景を知っていただけることに加えて、直接お会いすることでわかっていただけることは実に多いです。例えばロイヤルカナンでは、どのような社員が働いているのか、どのような姿勢、情熱を持って仕事をしているのか、などです。イベントが終わったあと、企業姿勢が理解できて良かったです、などのお言葉をいただけるのは本当にうれしいことですね。
藤崎:「企業を知るには、働く人を知ればいい」、と言われますが、確かもそれも従来のマスマーケティングでは不可能ですよね。
愛澤:簡単なことではないかもしれません。
藤崎:ペットフードは、いわば愛情産業なので、ユーザーと企業の間でどれだけ共通言語を持てるのか、ということだと思いました。
愛澤:共通言語を持てるか、共感をいただけるかというのは本当に大切なことですね。ロイヤルカナンの犬と猫の健康を第一に考えるビジョンをぜひ、アンバサダーの方と一緒に実現したいです。
藤崎:犬と猫を愛する企業やその社員と実際に触れ合うことで、ユーザーも感じることが多いと思います。ペットはいわば自分の家族のひとりですからね。そう考えると、心から安心できる企業とおつきあいしたいのというのは、よくわかりますよね。
今回のポイント
・企業理念の実現が最優先。そのために何ができるかを考えた
・ネット時代だからこそ、ユーザーと直接、対話・対面することが大切
・ファンマーケティングは、長期的な視点が重要
・アンバサダーは今後のビジョンを一緒に実現するパートナー
今回のまとめ
ロイヤルカナンが掲げる「犬と猫の健康」という大目標に向かって、企業とユーザーが一緒に取り組む。それがロイヤルカナンのアンバサダー・プログラムです。大きな理念を共有することで、企業とのエンゲージメントや、ユーザー同士の連体感も生まれます。
ネットに情報が溢れているからこそ、企業としてユーザーと直接、対話・対面することが重要という指摘に、はっとした方も多いのではないでしょうか。まさにその通りですよね。(アジャイルメディア・ネットワーク
藤崎実)
今日は、理念&施策編でした。明日は成果編をお届けします。
※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。