通販限定の化粧品だからこそ、人の温度感が必要だった(KOSE 米肌)

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【前回の記事】「アンバサダーとの共創がプログラムを支えている(ネスカフェアンバサダー)」はこちら

KOSE「米肌」は、「ライスパワーNo.11」というエキスをベースにした通販限定の化粧品シリーズです。今までネットでのプロモーション展開を充実させてきましたが、4周年を迎えた2016年、アンバサダープログラムを始めました。ネット通販とアンバサダーの組み合わせには、どんな狙いと効果があるのでしょうか。「米肌」の担当者である佐々木渉さんにお話を伺いました。

今回のゲスト

佐々木渉 氏
コーセープロビジョン 事業推進部
現在、同事業推進部にて米肌ブランドに従事。米肌アンバサダープログラムを始め、オフラインメディアを主に担当している。
2.1

温度感のあるメッセージを伝えたかった
2.2

藤崎:アンバサダープログラムを、始めたきっかけから教えてください。

佐々木: 化粧品の通販は競合が多くたいへん厳しい市場です。そこで「米肌」が4周年を迎えた2016年、さらなる成長のためにユーザーと一緒に取り組む企画を始めるべきだと判断しました。

藤崎:今までさまざまな施策を続けてきた結果、ある一定の商品認知が得られたということでしょうか。

佐々木:もちろん今後も「米肌」の認知拡大は必要だと思っています。しかし、次のステージに向かうためにもっと大切なことは一般的な認知というより、「米肌」という商品が持っている明確な魅力や強み、私たちコーセーからのメッセージをきちんと知ってもらうことだと考えています。

アンバサダープログラムを始めることによって、何よりも「温度感があるメッセージを発信できるのではないか」という点が一番のきっかけになります。

藤崎:「温度感」というのは具体的にどういうことですか?

佐々木:ネット通販は人を介さない販売です。従って、「米肌」からメッセージを発する場は限られています。例えば、ECサイトやメルマガ、会報誌などです。そういう場だけでは情報を一方的に届けるだけになってしまう傾向がありました。

しかし、我々メーカーとしては商品の深い情報や、個人に合わせた使い方など、伝えたいことはもっとたくさんあるわけです。そこで、どうしたらリアリティのあるメッセージを発信できるだろうかと考えていました。

アンバサダープログラムに期待したのは、実際の利用者の声を伝えることで、商品の情報に加えて、利用者の生々しい実感や使用感、感想などの「人感」を伝えることができる点です。それが、私の考える「温度感」ということです。

藤崎:ネット限定の通販だと伝わりづらい「そこに人がいる感覚」を加えるにはどうしたらいいかと考えたわけですね。

佐々木:はい、そうです。店舗がなく、ネットだけで完結することができるからこそ、人の「温度感」をどう伝えるのかは、たいへん重要だと考えています。

藤崎:先ほど化粧品の通販市場はライバルが多いという話がありました。考えてみれば2つのレイヤーがありますよね。一つは「通販化粧品」という市場での競合、もう一つは「米肌」の特徴である「ライスパワー」という分野での競合です。それらのライバルを考えたときに、アンバサダープログラムに取り組んだ優位性というのはあるのでしょうか。

佐々木:確かにこの業界にはたくさんの競合がいます。その中で、お客様から信頼され、これからもブランドとして発展していくためには、差別化ポイントをどれだけ持てるかは重要です。それにはまず商品そのもの、その次にいかにユーザーを大切にしているかだと思います。

2.3
(アンバサダーを集めたミーティングにて)

その意味で、アンバサダーの方々が発信するメッセージを大事にすることは、「米肌」のブランディングに重要だと考えています。メーカー発のメッセージに比べて、ユーザーからの声は説得力があります。一番大事なことは、アンバサダーの存在が通販にリアリティを伝えてくれる点です。

使用機会と実感をクチコミで増やす

藤崎:アンバサダープログラムの内容を教えてください。

佐々木:化粧品という商品の特性上、購入を迷っている人の参考になるコンテンツが増えるように、大きく4つの施策を同時に走らせています。

1つ目は、「米肌」を既にお使いのユーザーに、感想やおすすめのポイントを発信してもらう「教えてあなたの米肌体験キャンペーン」です。

2つ目は、「米肌」の未使用者、もしくはまだ使ったことがないアイテムがある人に向けて「米肌欲しい宣言キャンペーン」を行っています。欲しい商品を選んでもらい、その気持ちを投稿してもらうものです。

3つ目は「米肌体験レポーター」です。これは季節に合わせた「米肌」のラインアップや、発売前の商品に関して特別モニターを募集して、体験レポーターになってもらう企画です。みなさんから、使用した感想をしっかりいただけるので、このクチコミも新規ユーザーの参考になっています。

4つ目は、年2回のペースで行っているアンバサダーミーティングです。「米肌」は対面販売ではないので、直接アンバサダーの方と触れ合える有意義なイベントになっています。

当日は「米肌」ブランドや、ライスパワーエキス、開発秘話、正しいスキンケアの使い方や、お手入れ方法などを弊社のビューティープロデューサーがレクチャーします。集まってもらったファンの方に有意義になるよう、「米肌」のより良い使い方、より高い効果が体験できるレクリエーション的なイベントにしています。

藤崎:なるほど、化粧品は季節によって使うアイテムが変わるので、3つ目で挙げられている季節をテーマにするのはいいですね。

佐々木:例えば、夏は夏用のケア商品、9月は新商品のクリームとエイジングケア系の商品といった具合に変えています。

藤崎:ユーザーの身からすると「とても親切なブランド」だと映りますね。「体験レポーター」と銘打っているところもいいです。自分の体験をみんなのためにレポートしたくなります。

佐々木:みなさん、熱心に体験をレポートしてくださいます。「良さを周りに伝えるんだ」という気持ちになってくれるようです。季節性に関しては、やはりその時期に合わせた方が効果を実感しやすいですし、ラインアップを伝えることでブランドの充実ぶりも伝えることができます。

藤崎:従来の広告だと、モニターも一度決めた商品でずっと続けていくケースが多かったと思います。でもネットではフレキシブルに施策を動かしていくことができるので便利ですね。

佐々木:季節に合わせたおすすめのアイテムを3点や2点セットで提供しています。これだけたっぷりと使ってもらう機会はアンバサダープログラムならではのため、毎回かなりの反響があります。

2.4
(藤崎実氏)

藤崎:やはり化粧品という分野だけに、女性にとってはお肌に合う、合わないということが大きいのでしょうね。一度自分に合うと、その化粧品のファンになるということですよね。

佐々木:それは非常に強いと思います。そこで、できるだけ使用機会を増やして試してもらいたいのです。今まで述べた企画は、参加者の知人や友人に発言が届くことになり、とても効果的な投稿企画になっているという実感があります。

重要なのは中身の濃さ

佐々木:実際にアンバサダープログラムを運営して思ったことは、クチコミは「量」も大切ですが、もっとも大事なのは「中身の濃さ」ということです。

藤崎:詳しく教えてください。

佐々木:お化粧品は顔につけるものなので、ただ「良い」「気に入っています」といった表面的なクチコミがたくさんあっても、迷っている人の気持ちを動かすことはできません。

「なぜ良いのか」「なぜ気に入っているのか」といった、クチコミを発する人にとっての使用理由がセットになって、初めて迷っている人の最後の後押しができるのだということを実感しています。つまり、それを一言で言えば「中身の濃さ」です。

藤崎:それは個人的な体験や感想でもいいのですか?

佐々木:もちろんアンバサダーの方の個人的な体験も重要です。ただそれ以上に、商品が持っているファクトも重要です。そうした「中身の濃さ」を担保する工夫として、アンバサダーイベントでは弊社のビューティープロデューサーから、「米肌」についていろいろな角度からプレゼンテーションをしてもらっています。

2.5

藤崎:なるほど。まず自分が気に入って使い始めたアンバサダーの方が、メーカーの人からもっと詳しい内容を聞くことで、ご本人も自分の選択に納得感を持てるかもしれませんね。「だから私の肌に合っているんだ」、と納得してもらうことで、その内容を人にも伝えたくなる気持ちはわかります。

佐々木:人を動かすクチコミで大切なのは発言数ではなく、理由や裏づけがキチンと語られている必要があるということですね。実際に、「米肌アンバサダー」の方々のクチコミを見ると、物語というか、深いところまでしっかり理解して書き込んでくれています。

藤崎:普通の化粧品と違って「ライスパワー」という特徴があるので、自分の肌に合う人にとっては、語りたくなる魅力があるのだと思います。

佐々木:私はアンバサダーの方のクチコミには全て目を通していますが、やはり「中身が濃い」という印象を受けます。しかも、みなさん積極的に人に伝えてくれています。

2.4
(佐々木渉 氏)

藤崎:最初に「温度感」というお話がありましたが、それに尽きると思いました。極端な例ですが、Webで話題になっていることを演出するため、業者がダミーのサイトをたくさん作ることも起きています。確かに検索すると、Webサイトがたくさんヒットすると話題になっているような錯覚を覚えますが、中身をよく見ると実は宣伝用のサイトだったりします。それらの共通点は「温度感」がないことです。

佐々木:私はクチコミには人間味がなければ、身近に感じてもらえないと思っています。

藤崎:そうですよね。だから佐々木さんがおっしゃる「温度感」というキーワードはとても大事だと思いました。当たり前ですが、「ちゃんと利用者が書いている」というのはアンバサダープログラムの大きな特徴ですよね。

顔が見えるクチコミが大切

藤崎:化粧品業界では今までも「体験者の声」という企画はたくさんあったと思いますが、「米肌」のように、ユーザーの顔ができるだけ見えるような取り組みは、あまりなかった気がします。

佐々木:従来は「不特定多数の誰か」が感想を言っている感じでしたよね。しかし、誰が言ったかわからないクチコミよりも、知人であったり、顔の知れた人からの発信の方が安心感であったり、身近さを感じてもらえるのではないかと思っています。

藤崎:確かにSNS上で繋がっている友人から感想が直接届くのは、商品との親密感が違いますよね。

佐々木:本当のリアルが伝わるのではないでしょうか。もちろん、知らない人のクチコミでもいいのですが、きちんと特定の個人からの発言であるとわかることが大事だと思います。顔が見えるクチコミが大切だということです。

藤崎:「米肌」の場合、ホームページにも過去のイベントレポートなどが出ていて、商品を使用している方や商品検討者がイベントの追体験ができるようになっています。イベントを開催して終わらせずにコンテンツ化するのは、大変有意義だと思います。他社の例ですが、アンバサダーのクチコミを集約したまとめサイトなども、新規ユーザーの参考になるようです。今日はありがとうございました。

2.7

今回のポイント

・温度感のあるメッセージを伝えたかった
・通販市場ではリアリティが重要
・使用機会と使用実感をクチコミで増やす
・重要なのは中身の濃さ
・顔が見えるクチコミが大切

今回のまとめ

今回も大事な学びがありました。クチコミに大切なのは「量」ではなく「中身の濃さ」だということ。ネット通販だからこそ、人の温度感がいかに大切か。顔の見えるクチコミがいかに大切か。

化粧品は特殊な分野です。成分だけ知っても、実際に試してみないと自分に合うかどうかわからないからです。でも、自分に合った良い化粧品が見つかった時、たくさん悩んだ分だけ「その良さを人に伝えたい」と思う気持ちはわかる気がします。

クチコミは自分の経験を他の人に役立ててもらいたい、という気持ちから行われるものだと言われます。そう考えると、クチコミとはネット上に集められた、いわば集合知です。化粧品は特殊な分野だけにクチコミがもたらす説得力は大きいと思いました。

※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。

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amnblog • 2016年10月18日


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