監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第6回)おススメを知りたい心理

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。
本年もよろしくお願いいたします。

今回はちょっとおもしろいお話です。
アンバサダーがおススメしてくれる効能について、行動経済学の視点から興味深いお話をご紹介します。

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■選択肢が多すぎて、選べない時代。

「選択肢が多すぎて、選べない」という経験はありませんか?

例えば品数が多いと評判の巨大店舗に行き、たくさんの商品郡を見ているうちに、どれがいいのかわからなくなってしまい、意気込んで買いに行ったはずなのに、結局買わずに帰ってきてしまった、などという経験はありませんか?

2007年にオンエアされた大和証券グループのシリーズCMの一遍に、米国、プリンストン大学の行動経済学者、エルダー・シャフィール(Eldar Shafir)教授が登場する「決定回避の法則」ベビーカー篇、というCMがありました。

これは店頭に色違いの4台のベビーカーを並べて売った場合と、何十種類もの色違いのベビーカーを並べて売った場合とを比較して、色違いの4台を並べた場合の方が売れるということを紹介したCMでした。

また、このシリーズの一遍で、同じくシャフィール教授が登場する「現状維持の法則」  黒い手帳篇、というCMもありました。

こちらは数種類の色バリエーションを前にして、「本当はもっと多くの色から選びたい」と思いながらいつも黒い手帳を買っている青年に対し、思いっきりたくさんの色の手帳を選択肢に与えるというもの。その結果、意外や意外、青年は迷ってしまい、結局いつもと同じ黒い手帳を選んでしまう、というCMでした。

この二篇でシャフィール教授が提唱しているのは次のことです。

  • 「決定回避の法則」 選択肢が増えすぎると、人はむしろ何も選べなくなる。
  • 「現状維持の法則」 選択肢が広がると、いつも通りのものを選んでしまう。

いかがでしょうか。私たちの普段の消費心理を上手に描いたCMだと思います。つまり、選択肢が多い方が、その中から自分の目的にあったものが選べると思うのは理屈であって実際の消費者心理は違うということ。選択肢が限定されていたり、広がり過ぎていない方が、人は選択しやすい、というわけですね。

さて、それらのCMはリアルな店頭が舞台でしたが、ではこれがWeb空間でのショッピングだったらどうでしょうか。

インターネットはすばやく検索できて便利ですが、同時にさまざまな情報を山のように引き連れて目の前に提示してくれます。

まず今の時代はどんな商品も、とにかくラインナップを充実させています。検討する前に全部見るだけで大変です。さらに同種の他社商品と比較検討しようものなら、同様の商品が驚くほど目の前に登場することでしょう。

そんな時、私たちは商品やサービスを選択する際に、何を参考にするのでしょうか。ここで商品レビューが登場します。アマゾンや価格.comでのコメントや推奨。アップルのサポートコミュニティでの商品アドバイス、トリップアドバイザーでのおススメなど。

これらは一般の人の声ですが、企業の発言よりずっと信頼されていることは、この連載の「(第4回) 広告よりクチコミを信じる時代」で書いたとおりです。

 

■おススメを知りたい

本書『アンバサダー・マーケティング』ではアンバサダーと永続的なリレーションをとっていくことを推奨しています。本物のアンバサダーは、自分が好きなブランドや商品やサービスを永続的に応援してくれます。そして、そのアンバサダーが書いた熱いコメントや、応援、誰かへのアドバイス、愛情があるからこその厳しいレビューなどはWeb上で堆積し、検索という行為によって購入検討者の目の前に浮上します。

そして、それらのオーガニックな情報が、「ある商品を買いたい。でも選択肢や種類が多すぎて選べない。」という消費者の参考になることは間違いありません。そして背中を押してくれる情報になる可能性も少なくありません。

ところで、「選択肢が多くなると逆に行動を起こせなくなる」、という心理は、実は誰もが持つ普遍的なものだとか。

だから選択肢が多岐にわたる場合、人は無意識に誰かのアドバイスや参考意見を求めるものなのでしょう。

そういえば、あなたも自分では決められないような悩ましい問題にぶつかった時、友だちに相談したことがあるのではないでしょうか?

「失敗したくない。だからおススメを知りたい。」その心理がよくわかるあなたは、今まで誰かにアドバイスを求めてきた経験があるからですよね(笑)

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター

(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2014年1月7日


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