消費者はメーカーの言うことを信じない:フォードがアンバサダーに用意した3つの事〜書籍『アンバサダー・マーケティング』より 第26回

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アンバサダーマーケティング藤崎実26

前回はゼネラルモーターズ(GM)グループのGMCの事例をご紹介しましたが、今回はいよいよフォードの事例です。購入まで検討を繰り返す自動車などの高額商品ほど、アンバサダーの影響は絶大です。今までレストラン病院フィットネスクラブソフトウエアの事例もご紹介してきましたが、今回もヒントが満載です。他業界の方もぜひお読みください

 

■消費者は自動車メーカーの言うことは信じない

フォード自動車のソーシャルメディア総責任者として有名なスコット・モンティ氏は次のように語りました。「消費者はフォードなど自動車メーカーの言うことは信じないかもしれないが、同じ立場の人々や友人が言うことは信頼する」

つまり、消費者はメーカの言うことではなく、アンバサダーの言うことを信じるというのです。この考え方に基づいて、スコット・モンティ氏はアンバサダーにフォードとの体験を語ってもらえるように色々なツールを提供することにしました!

■アンバサダーに用意したこと① 「情報発信&共有のプラットフォーム」

そのツールの中心が「フォード・ソーシャル」でした。これは顧客がフォード車について学んだり、フォードの従業員や他のフォード車オーナーと情報共有やチャットが気軽にできたりするプラットフォームです。

この情報発信&共有サイトを提供することで、フォードオーナーはフォードにまつわる自分のお気に入りのエピソードを書き込んだり、同社の技術者やデザイナーとアイディアを共有したりできるようになったのです。
そして顧客に対して、フォードの体験談を積極的にシェアしてくれるように呼びかけた結果、「フォード・ソーシャル」はフォードのソーシャルメディア活動の中心になり、オーナーによる活動は次第に大きな広がりとなっていったそうです。

考えてみれば、自分の好きなブランドの従業員とやり取りができるサイトって、あるようでありませんよね。こうしたプラットフォームは、ユーザーとメーカーが直接コミュニケーションできる時代の象徴なのではないでしょうか。

■アンバサダーに用意したこと② 「可視化できるアンバサダーの証」

また、フォードはオーナーがダウンロードして自分のフェイスブック・ページなどに貼りつけることができる「バッジ」を用意し、積極的に使ってもらえるように呼びかけました。これは簡単に他者から認識できる上に、ソーシャルメディア上にアンバサダーの存在を広くアピールできるので、さりげないオススメのかたちとして効果を発揮したそうです。

これはアンバサダーとして自ら名乗りをあげてくれたユーザーへのプレゼントであると同時に、アンバサダーにとってはブランドから認められたという誇りであり、その存在を世の中にアピールできるマークだと捉えることもできます。可視化できるということは、想像以上に大事なことかも知れません。

■アンバサダーに用意したこと③ 「特別な体験!」

さらにフォードは、最も活発に発言しているアンバサダー5人を、2012年1月にデトロイトでの北米国際自動車ショーでの新型「フォード・フュージョン」のお披露目式に特別に招待しました。

新型車のデビューに、ファン代表として立ち会うことができる!
それはフォードファンにとっては大変な名誉であると同時に、ひときわ感激の時だったと思います。人生の中でも滅多に立ち会えないそんな素晴らしい式典に招待されたアンバサダーは、その体験談をレポートとしてソーシャルメディア上にシェアすることでしょう。そしてその熱い思いや感激は、きっと多くの人の気持ちを動かすことでしょう。

肝心の新車情報と共にアンバサダーの感動やライブ感溢れるレポート、そしてそういう素晴らしい場を用意したフォードのユーザーを大切にする姿勢が、インターネット上に情報共有され、喝采と共にさらに大きなうねりとなって拡散していく様子が目に浮かぶようです。そして、それらのすべてがフォードファンの心をさらにつかんでいくのです。

アンバサダーを大切にするということは、つまり、既存のファンに営業マンになってもらうことだということがよくわかりますね。次回もフォードの事例をご紹介しますが、あっと驚く内容です。お楽しみに!

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2015年3月20日


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