【ソーシャルメディア活用(19)ベネッセコーポレーション】「ソーシャルメディアを使うのは親、しまじろうが好きなのはお子さまなんです」

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今回はベネッセコーポレーションで“こどもちゃれんじ”のソーシャルメディア運用を担当する幼児商品開発部 次世代商品開発セクションの戸叶有美さんに、ソーシャルメディアの取り組みについて聞きました。

震災発生で、「非常時の子育て」テーマのアカウントに急きょ変更

――ソーシャルメディアに取り組み始めたきっかけを教えて下さい。

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(ベネッセコーポレーション 戸叶有美さん)

戸叶 社内でテスト運用を始めてから実際にリリースするまではタイムラグがあったので、いつからと定義するのは難しいのですが、2011年の年末くらいからですね。年明け3月から4月くらいにリリースできたら、と準備を進めていたのですが、東日本大震災の影響でそれどころではなくなり、まずはこどもちゃれんじではなく、非常時の子育てをテーマにした「非常時の子育て情報<こどもちゃれんじ>」というツイッターアカウントを急きょ立ち上げました。

震災の影響を受けて避難所で生活されている人がいたり、放射線の心配をする親御さんがいたりと、そういう方々に向けて情報発信することが目的です。本当は順序立ててリリースしたかったのですが緊急事態ということもあって、まずはこのアカウントを開設し、その後「こどもちゃれんじ」のツイッターやフェイスブックなどを順々に立ち上げていきました。

――震災の影響を受ける前にツイッターを立ち上げようと考えたきっかけは。

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(非常時の子育て情報<こどもちゃれんじ> ツイッターアカウント)

戸叶 私たちが扱っている「こどもちゃれんじ」は、通信教育の特性上、1度お客様に契約していただくとあとは送りっぱなしでその後のフォローが難しい、という側面があります。受講いただくまではさまざまなコミュニケ-ションやダイレクトメールなどを行うことができるものの、受講が始まったとたんに画一的なコミュニケーションになってしまい、教材の内容がすべてになってしまう。ソーシャルメディアを活用することで、お客さまの思っていることにすぐ応えられる場所が作れるのではないか、そう考えました。

実は教材の準備には半年くらいの期間が必要で、真夏にクリスマスの教材を作ったり、冬にスイカを手に入れて夏の教材を作ったりしています。そうした半年先の教材を作っているとどうしてもリアルタイムなコミュニケーションが難しいのですが、もっとお客さまが持っている教材の感想や今欲しい情報などへリアルタイムに対応したい。そう考えてソーシャルメディアの開設に踏み切りました。

――立ち上げ前に社内からの心配や反対の声などはありませんでしたか。

戸叶 ソーシャルメディアを始めようか、と検討している段階で震災が発生したので、とにかく始めてしまった、というのが実際のところですね。こどもちゃれんじはベネッセが運用しているソーシャルメディアの中でも早い段階で開始していて、「どうやって始めたんですか」とよく聞かれることがあるのですが、実はそんな事情で始めていて、「どうやっていこうか」と考えながら運用していました。

最近では他の部署でもソーシャルメディアを立ち上げていますが、さまざまなアカウントが運用された結果、今のほうがリスクが明確に見えているので「運用が怖い」と思っている部署もありますね。我々は正直そういう怖さを知る前にゆるいまま始めてしまった、という感じです。一方で我々が初期にソーシャルメディアを運用したことで、社内のガイドラインを作る前例になっている、という側面もあります。

一方通行の発信から「コミュニケーション型」へ

――実際に運用してみた感想はいかがですか。

戸叶 立ち上げの時は私の前任者が担当していたのですが、私も含めて最初はどうしていいかわからなくて悩んだりもしましたね。お客さまからいただいた質問もすべてに答えられるわけではないので、当初は質問が起きないようこちらからの情報発信をメインに運用していました。当初は震災に関する情報も多かったので、情報発信中心というスタイルのほうが適していましたね。

ただし、そうした一方通行な情報発信だと、教材をお送りしているのとほとんど変わらず、せっかくソーシャルメディアを立ち上げた意味がありません。こちらからソーシャルメディアを通じて話しかけたことへお客さまからコメントをいただき、それに返信することでコミュニケーションを作っていこう、と考えたのが今年に入ってからのことです。

――「非常時の子育て情報<こどもちゃれんじ> 」の運用はどのように行われていましたか。

戸叶 「非常時の子育て情報」は、震災に対する情報発信を行う専用のツイッターアカウントとして、それぞれの専門家にインタビューしてきちんとした情報を発信するようにしていました。当時に比べると非常時性は薄れつつあるかもしれませんが、今も毎日情報発信を続けています。

情報として何か新しいものが増えているわけではなく、同じ情報を繰り返し発信もしているのですが、それでもフォロワーが止まることなく増えていて、結局一番フォロワーが増えているアカウントになっています。こどもちゃれんじのアカウントの場合は話の内容が教材になってしまい、しまじろうが好きな人には楽しいと思ってもらえますが、子育て情報や非常時の子どもの対応が気になる人にとっては、「非常時の子育て情報」もまだまだ有用だと思っていただけているようです。

――2つのツイッターアカウントはどのように運用されていたのでしょうか。

戸叶 運用自体は同時に行っていて、非常時色が薄くなってくるのに合わせて震災関連の情報発信の量を減らしつつ、周りの情報を見ながら編集部からの情報発信比率を上げていきました。

「非常時の子育て情報」は、記事を作るという面ではおそらく10人以上が記事を作っていましたね。それをどのように組み立てて発信するかというのは1人で行っていて、こちらは情報発信メインでほとんどお返事などはしていません。こどもちゃれんじのアカウントは私が1人で編集部を担当していて、記事も1人で書いていました。

――個人でもツイッターは使われていたとのことですが、会社の公式アカウントで運用してみての違いは感じられましたか。

戸叶 ツイッターはリアルタイムなので、コミュニケーションが大変な部分もありますね。私もソーシャルメディア専任ではないのですべてのコメントに返事するのが難しく、たまに拾いきれないコメントもあったりするのですが、それを返事がないと思われたりすることもあります。

一方で1人に答えると他の人にも答えなければいけないというのもありますね。自分のツイッターなら答えたい人にだけ答えればいいですが、会社のアカウントとしてそうはいかないので。そのため質問はできるだけ窓口に誘導するようにしていて、こちらからユーザーをサポートするアクティブサポートは運用上行わないようにしています。

mixiは「アツい」お母さんたちが使っている

――ツイッターに続いてフェイスブックも立ち上げられましたが、ツイッターとの違いはありますか。

戸叶 フェイスブックを始めたのは今年になってからですが、ツイッターに比べると時間がゆったりしていますね。ツイッターの時は頻度を気にしていて、コメントをもらうとできるだけ早く返事をしなければ、というのを気にしていたのですが、フェイスブックは1日数回程度の記事を出すだけでいいので、運用しやすいのはフェイスブックです。

一方でフェイスブックはネタを探すのが大変ですね。ツイッターは「撮影に行ってきました」という小さい記事や写真だけでもおもしろがってもらえるのですが、フェイスブックの場合はしっかりした記事にしないといけないので、ネタをどのように記事にするかは悩みどころです。

情報は基本的にツイッターとフェイスブックで変わらないのですが、ツイッターのほうが頻度が高いのでお知らせが増えますね。また、商品の紹介もツイッターを中心にしています。こどもちゃれんじの教材は年齢別になっているため、お子様が該当の年齢でない方には興味を持っていただけないので、フェイスブックではあまり強く出し過ぎないようにしていますが、ツイッターなら6学年分の記事を6本出すだけでいい、というような違いはあります。

――ツイッターとフェイスブックでユーザーの違いは感じられますか?

戸叶 フェイスブックは実名で登録している人が多いこともあって、コメントを書きにくいのではないかと想定していたのですが、実際には1度コメントをするとその後も常連になってコメントしてくれる人が多いですね。ツイッターはどちらかというと気になった時にいくつもコメントをくれる人が多く、初めてコメントする、という人も多いです。

――mixiページも運用されていますね。

戸叶 mixiは「アツい」お母さんたちに使ってもらっていますね。いわゆる「ガラケー」を使っている人が多いので、スマートフォン向けのキャンペーンをお知らせしたら「スマートフォンじゃないから応募できない」「スマートフォンじゃなくても応募できるようにして欲しい」という声をたくさんいただきました。

コメントが集まりやすい記事というのはフェイスブックもmixiも同じ傾向です。ただ、フェイスブックのほうが若干ながら男性のコメントも多く、お父さんが子育て情報を得るために使ってくれているなら嬉しいな、と思います。

――ソーシャルメディア運用以外にYouTube(ユーチューブ)で動画も公開されています。

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(ユーチューブ内のしまじろうチャンネル)

戸叶 もともとユーチューブのチャンネル自体はあったのですが、公式にリリースしたのは去年のタイミングですね。しまじろうのアニメなどお手元にある動画をユーチューブにアップされる方が多くて、それなら公式にもっといい動画が出せるといいかな、と思って始めました。アニメの予告に加えてユーチューブ限定の動画なども公開していますが、レストランの待ち時間や車の中などでも楽しく視聴いただいているようです。

――どのような動画が人気なのでしょうか。

戸叶 しまじろうの歌が一番の人気で、100万回以上再生されています。ただ、歌の動画はじわじわと再生回数が伸びているのに対して、アニメの予告は1週間で5000~6000近く再生されるので、みなさんが楽しみにしているのは予告のほうかもしれません。また、しまじろうが出てこない動画だと再生回数が伸びにくいですね。アニメが人気なのもそういうところにあると思います。

――やはりしまじろうが人気なんですね。

戸叶 フェイスブックでもいろいろと試してみたのですが、「こういう便利なページがありますよ」と紹介してもあまり反応はないけれど、「今日しまじろうがこんなことをしたよ」というように話しかけるといい反響がもらえますね。写真を撮るときもできるだけしまじろうの人形を写しつつ「しまじろうがこんなことをしているよ」と紹介するようにしていますが、「いいね!」をつけてもらいやすいですね。

子どもと大人が一緒に使えるアカウントにしたい

――ソーシャルメディア運用の効果測定はどのようにお考えでしょうか。

戸叶 フォロワーの数も大事ですが、教材を買っていただいた方との接点を増やしたいということを目的として始めているので、フォロワー数だけでは考えていません。プレゼントキャンペーンなどを実施すればフォロワーは増えると思いますが、一方でこどもちゃれんじに興味のない人も増えてしまう。それよりは着実にこどもちゃれんじのことを知っていただいて興味を持ってもらえる方々を増やしていきたいと思います。

ただ、難しいと感じているのは、ソーシャルメディアを使っているのは親御さんたちですが、しまじろうが好きなのはお子さまなんですね。親御さんにとって、自分たちの子どものためにフォローしてもいいアカウント、と思ってもらえるようにするためには、子ども向けでもいけないし大人向けでもいけない、子どもと大人が一緒に使ってもらえるアカウントでなければ、と考えています。

――今後取り組んでみたい施策やサービスなどはありますか。

戸叶 しまじろうというキャラクターがいるので、LINEやPinterestという方向も無くはないかなと思いますが、先ほどの通り実際に使っている人が親御さんだということを考えると、今は世代を広げるよりも、ツイッターやフェイスブックを通じてもっと多くの人と深くコミュニケーションできることを考えていきたいと思います。

ツイッターとフェイスブックでやってみたいと考えているのは写真投稿ですね。今まではどこまでお子さんの写真を送ってくれるかわからないのでそういった企画は控えつつ、実験的に「自宅のしまじろうを紹介してください」という写真投稿企画を実施したのですが、予想以上にお子さんの写真を送ってきてくれる方々がいらっしゃいました。そういう写真投稿のような企画を通じて、コンサートに行ってきた報告をもらったり、お客さまの立場でいいと思ってもらえる体験談を掲載したり、そういったコミュニケーションができるといいなと考えています。

また、ツイッターで最近開始予定なのが、しまじろうのメッセージサービスです。ツイッターでは毎日しまじろうからのメッセージを投稿しているのですが、それを「しまじろうからメールが来たよ」とお子さんに見せている人が多いそうなんです。それならばということで、お誕生日のお子さんに「お誕生日おめでとう!」というメッセージを個別にお送りするサービスを始めることにしました。

――メッセージは機械的に自動で送られるのでしょうか。それともスタッフが送るのでしょうか。

戸叶 まずはスタッフが手動で運用します。大変だとは思いますがそういうニーズがあって喜んでもらえるのなら嬉しいですし、アニメのファンという方もフォロワーの3割くらいはいらっしゃいますので、実際に「誕生日のメッセージが欲しい」という人はそこまでいないだろうという想定もあります。フェイスブックはユーザーから投稿をもらえるのですがツイッターはそういうことができないので、お一人ずつとコミュニケーションできるといいなと思っています。

――インタビュー雑感
ファン数やフォロワー数などの数値だけを目標に運用するのではなく、生活者がどのような情報を求めているかということを日々模索しながら運用していく姿勢は、ソーシャルメディアの活用において非常に重要であると感じました。(アジャイルメディア・ネットワーク)

次回(12月27日)は本田技研工業です。

※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。

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2012年11月19日


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