【ソーシャルメディア活用(5)パナソニック】「アメリカ発のニュースをブラジルやヨーロッパへ」

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「第二回ソーシャルメディア活用企業調査」(アジャイルメディア・ネットワーク=AMN調べ)でランキング5位に選ばれたパナソニックは、企業・商品情報のグローバル発信にソーシャルメディアを活用しています。各国の現地法人で発信するニュースを本社で集約し、他国に再配信するなど、グローバルのCRM展開の舵取り役としてさまざまな取り組みを進めています。CRM推進室 山本雅通さん、グローバル広報室 岸原直人さん、コンテンツ企画センター 工藤里衣さんにお話を伺いました。

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(左から:山本雅通さん、工藤里衣さん、岸原直人さん)

海外での企業・商品認知度アップが狙い

――ソーシャルメディアの活用を考えたきっかけとは?

山本 特別なきっかけは正直なところありません。時代が進むに伴って、Webの利用手段や目的も変化していきますし、お客さまが使っているサービスであれば、そこに私たちも対応する必要があります。ソーシャルメディアが支持されているのであれば、我々も当然のようにソーシャルメディアを活用していこうと、自然発生的に始めました。

工藤 国内でのパナソニックブランドや商品の認知度は高いのですが、海外ではまだまだだと思っています。実際にオンラインでも、海外だと話題にされることが非常に少ないというのが現状です。我々はそれを非常に危惧していますので、ソーシャルメディアに特化するというよりも、ソーシャルメディアも含めたオンラインの中で、できるだけ多くパナソニックの情報を発信していきたいと思っています。

――地域ごとや国ごとにアカウントがあり、まとめているというのが特徴的ですよね。

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工藤 そうですね。先ほどもお話しした通り、ソーシャルメディアの活用自体は自然発生的に始まったのですが、日本だけではなく世界のいたるところでソーシャルメディアの取り組みが行われていたため、そうした世界中のソーシャルメディアのアカウントが本物であることの証明をするという目的がありました。また、ソーシャルメディア上ではまだまだフォロワーやファンの数は少なく一つのアカウントの規模が小さいので、グループ全体で見せていきたいという考えや、各地で積極的にお客様とコミュニケーションを取っているということをきちんとアピールしたいという意図もありました。

「オウンドメディア」を中心に、トリプルメディアのバランスを重視

――独自で運営されている会員サービス「クラブパナソニック」も含め、媒体ごとの使い分けはどのようにしていますか。

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山本 私たちは、ソーシャルメディアにせよペイドメディアにせよ、もっとも重要なのは自社で運営する「オウンドメディア」と考えています。ソーシャルメディアのコンテンツを充実させてそこにファンが付いたとしても、ソーシャルメディアの流行が終わってしまえばファンとのつながりも終わってしまいますし、オウンドメディアが充実していなければ、ファンは離れていくでしょう。自らオウンドメディアを充実させてソーシャルメディアを掛け合わせることで初めて、ソーシャルメディアを活用する意義が見出せると思います。ペイドメディアとソーシャルメディア、そしてオウンドメディアというトリプルメディアのバランスが非常に重要です。

――プロダクトや展開している国・地域が多岐にわたりますが、分業体制や部門ごとの連携はいかがですか。

山本 CRMのグローバル展開をする上での舵取り役として、2012年からグローバルコンシューマー部門の直轄組織としてCRM推進グループが立ち上がりました。商品の情報・お客様サポート・会員制サイトなどのWebを中心とした活動を横串で見ていくことがこの組織の役割です。各活動をしている担当者を集めた全体の会議では日本の担当者だけにとどまっているので、日本と海外地域の融合と統一をしていく必要があると考えています。まだまだ試行錯誤の段階なので、部門の編成や体制は今後も適宜変えていく必要があるでしょう。

各国・地域の担当者とつながることで、情報発信に厚みが増す

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岸原 世界的に見ても、キーパーソンとなる情報発信の担当者がこちらでも把握できるようになりました。従来は自己完結型で、国ごとの担当者が自国のターゲットに情報を発信していましたが、我々としてはグローバルにパナソニックを発信することを目指しており、たとえばアメリカで発信されたパナソニックのニュースがブラジルやアジア、ヨーロッパの人にも届けられるべきだと考えています。本社ではその国のプレスリリースを他国にも届けられるように、国・地域ごとの担当者をつなぐ取り組みを加速度的に進めています。

工藤 我々がソーシャルメディアやガバナンスを始めてみて各国の担当者を把握できるようになったのは、表に見えない大きな価値だったと思います。各国・地域の旗ふり役の可視化ができるようになりましたし、ソーシャルメディアやオンラインを通して他の国ともパナソニックとしてつながっていたい、世界に情報を積極的に発信してきたいという想いがある担当者も多いことも見えてきました。各地から情報が入ってくるようになり、また、我々本社から企業姿勢や考え方、ビジョンを各国に伝えることで、各国での情報発信にも厚みが増します。担当者がつながることで、パナソニックから発信される情報の量と質の向上へとつながっていると思います。

――日本にある本社が情報発信の中で果たす役割とは何でしょうか。

岸原 パナソニックは基本的には各自が自主独立経営で事業を展開しています。しかしその一方で、国ごとでサイトや情報が点在するという問題が起きていました。また、オンラインの世界に国境は関係ないので、どこを対象にしたニュースだったのかわからないといった事態も発生しました。本社としては全社を横断的につないだ上で、ユーザーに対して迷わず世界各地の情報を収集していただけるワンストップのオンラインニュース発信が非常に重要だと考えていました。

工藤 過去には各国で情報が点在化していて、それをつなぐものがないという状況でしたが、その問題を解決するためにWebサイトを立ち上げ、それを支えるためのソーシャルメディアという位置づけでトリプルメディアのバランスを重要視してはじめました。いろんな地域、担当者が始めていったものが蓄積され、それを世界へと放出していくためには、核となるポータルを確保しなければなりませんし、その役割を担うのが本社である日本です。たとえば日本国内での出来事をPanasonic News Portalを通して世界へとニュース発信することで、アジア圏から反響があってリツイートされたり、フェイスブックへの投稿があったりします。

岸原 ローカルはローカルでそれぞれコアな情報は持っているのですが、他の国の情報を持っていなかったり、会社全体の取り組みのことを語る機能がなかったりします。しかし本社である日本にはすべての情報が入ってくるのに加えて、企業としてのメッセージも伝えることができるので、Panasonic News Portalの運営は日本で、使用言語は英語という体制で運営しています。本社はハブファンクションの役割を担っています。

ローカライゼーションとグローバリゼーションの両立へ

――世界へ情報を発信する上での留意点は何でしょうか。

工藤 情報の受信者が必ずしもパナソニックを知っているという前提で情報を発信しないことですね。知っている前提がある表現とそうでないものは違うので、気をつけています。また弊社を知らないことを逆手にとって表現をキャッチーにするといった工夫もしています。

――ソーシャルメディアを導入する上で、社内の説得など苦労はされませんでしたか。

山本 ソーシャルメディアに黎明期から取り組むことを理解してくれる幹部が幸いにもいたので、私たちも積極的に対応できました。

――ネガティブな反応への対応はどうされていますか。

岸原 もちろん弊社でもリスクマネジメントは確立しています。ですがその前にそもそも炎上と言われるような反応を集める時は、企業活動や経営活動にもそうした反応を集めるだけの何かがあるのでしょう。パナソニックが企業として社会へ正しく価値を提供していれば、ネガティブな反応はありませんし、あったとしても淘汰されるでしょう。以前に比べて個人の情報発信が容易になった分、企業としてリスクを危惧されることもあると思いますが、企業活動をきちんとしていればソーシャルメディア上で問題が起きることはないと思いますし、問題が起きていたとしても素早い対応ができると思います。

――今後の展望をお聞かせ下さい。

山本 パナソニックではローカライゼーションとグローバリーゼーションの両立を目指しています。やはり弊社は海外でも積極的にソーシャルメディアを展開しているので、One Panasonicとして束ねていくのが難しいですね。日本のようにmixiが主流なところもあれば、アメリカのようにフェイスブックが主流な国もあるし、はたまた中国では全然違った種類のソーシャルメディアが使われていて、といったように国ごとによってソーシャルメディアの在り方が違うので、うまくローカルとの事情を考えながら、パナソニックとしてグローバルに情報を発信していきたいと考えています。

――インタビュー雑感

「オウンドメディアが第一で、ソーシャルメディアはそのサポート役」というソーシャルメディアの使用目的やプライオリティの明確化、ペイドメディアも含めたトリプルメディアのバランスが重要であることを学びました。またグローバルにソーシャルメディアを展開することがただ単にアカウントをたくさん持ってその国の顧客をターゲットとして情報を発信するだけでは不十分であり、本社でそれらを管理統制した上で、国ごとに点在している情報をまとめあげ、再発信するという本社の役割が今回の取材を通して見ることができました。(アジャイルメディア・ネットワーク)

インタビュー担当:AMNインターン 青山学院大学経営学部 芳賀ゼミ 糸井佑樹、人見彩菜
次回(3月26日)は、‎アディダスジャパンです。

※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。

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2012年3月12日


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