レストランの売上はレビューの星1つで5〜9%増加!(研究レポートあり)〜書籍『アンバサダー・マーケティング』より 第20回

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今回はレストランの事例ですが、ここにはたくさんのヒントがあると思いますので、他業界の方もぜひお読みいただきたいと思います。

クチコミ・マーケティングは、かねてからレストランの最も効果的なマーケティング手法だといわれてきました。
数年前、お金を払って誰かにクチコミを書いてもらう「ステルスマーケティング」が、社会的な問題として大きな注目を集めたこともありました。しかし最近ではクチコミ情報サイトにおける対策も進み、こうしたスパム行為が以前より排除されるようになってきたこともあり、レストランビジネスにおけるクチコミの価値は、以前にもまして重要なものとなりつつあります。

アンバサダーマーケティング藤崎実20

■本来、お店を評価するのはお客さま!

レストランのオーナーや経営者なら、おそらく「食べログ」「ぐるなび」などのクチコミ情報サイトで、自分たちのお店への好意的なレビューが増えて欲しいと願うのではないでしょうか。その効果のほどは、自分がレストランを探す時を思い浮かべれば、明白です。お店の雰囲気は?お店の人の接客は?肝心の味はどうなのか?どんな料理がおススメなのか?時間帯による混雑具合は?客層はどんな人たちが来るのか、などなど……。

とにかく知りたいことは山ほどあります。レストランは場の体験ですので、わざわざ行ってみて失敗したくないというのが消費者の本音です。価格とのバランスだって知りたい情報です。誰だって価格に見合った食事をしたいと思うことでしょう。それも含めて満足感というのですから……。

でも、どのレストランも自分たちのサイトではアピール上手です。素材へのこだわり。メニューの充実度。素敵な写真。雰囲気だって抜群のようです。当たり前ですよね。「最近は忙しいので、いい加減に料理を作っています」、なんて自分から告白するオーナーはいないでしょう。どこもウチのレストランなら間違いない選択です、今ならクーポンもありますと、あなたにささやきかけてくることでしょう。

でも忘れてはいけません。お店を評価するのは、お客さんです。私たちはそのことをよく知っているから、実際に行った人の評判や感想が気になるのですね。

アメリカでもそんな事情は同じらしく、クチコミ情報サイトとして有名なアーバンスプーンや、最近日本にも上陸したイェルプでの評価に注目が集まっているようです。

当然、食事に満足したお客さんによる好意的なレビューやコメントは、売り上げや評判を高めてくれます。逆に否定的なレビューは食中毒を起こす以上の破滅的な影響を経営に及ぼしかねません。

■星が1つ増えると売上げは5〜9%増加という驚き

ここでひとつ衝撃的なレポートをご紹介します。本書『アンバサダー・マーケティング』によると、ハーバード・ビジネス・スクールの助教授マイケル・ルカは最近の研究で、イェルプでの好意的な評価がレストランにどれだけ影響を及ぼすかを明らかにしたそうです。それによると、星がひとつ増えると、何と売り上げが5〜9パーセントほど伸びるそうなのです!

※レポートのダウンロードはこちら(英語です)→ 「Reviews, Reputation, and Revenue: The Case of Yelp .com, Michael Luca, September 16, 2011」

要するにイェルプの評価が星3つから4つに高まると、売り上げが5〜9パーセント増えるということです。年間100万ドルの売り上げがあるレストランの場合、イェルプで星が2つ増えれば、18万ドルの売り上増につながるということです。このレポートが与えてくれるインパクトはものすごいと思います。

数字が具体的なだけに、この結果は、「顧客による好意的なクチコミを増やすことがレストラン成功のカギを握る」という、私たちが普段、おぼろげに感じていたことを実際に裏づけるものだといえます。この事実はクチコミの大切さを、日常的に肌感覚で感じているレストランの経営者やオーナーを驚かせるに違いありません。

本書によれば、あるマーケターは最近、次のような言葉を口にしたそうです。「今日、レストランのマーケティングの成否は、自らが何を言うかではなく、周囲に何と言われるかにかかっている」と……。そうなんです。お店を評価するのはお客さま。そして顧客である私たちのクチコミが、お店の経営を左右してしまう時代なんですね。

イラスト:藤元秀征(ヨコハマデザイン株式会社) http://yokohamadesign.com/

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2014年10月9日


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