アンバサダー施策によりSNS上でのポジティブなクチコミが増加(ポータルサイトgoo)

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【前回の記事】「「顧客満足度」を上げる具体策がアンバサダー戦略(ポータルサイトgoo)」はこちら

スカパー!は2014年から、「スカパー!映画部」アンバサダープログラムを運営しています。なぜファンとのリレーションをつくる活動を始めたのか、その効果についてどう感じているのか、お聞きしました。

CS(customer satisfaction):顧客満足。米国で1980年代から指摘された概念でCSを高めることが企業の業績を向上させると言われている

今回のゲスト

千田忠慶(せんだ ただよし)
NTTレゾナント メディア事業部 ソーシャルサービス部門 CS担当・ブログ担当課長
gooが誕生した1997年NTT入社。金融関係のビジネス企画、goo広告企画営業、goo動画プロデューサー、教えて!goo広告商品企画、gooスマホ部企画に従事。2012年より、お客様の満足度向上を目的とするCS担当の責任者としてgoo事務局を運営。社員のソーシャルメディア利用促進の一環として、2012年 よりTwitter上で「ありがとう」のお礼とアクティブサポートを行うgooサンクスチーム(@goo_thanks)を開始し、2014年より「gooアンバサダープログラム」を始動。

2.1

「良い声」の継続的な増加が成果

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藤崎:アンバサダープログラムの成果や社内からの評価などについて教えてください。

千田:まず、成果についてご説明します。アンバサダープログラムを始める以前に、ユーザーの「傾聴」と「会話戦略」を行うために作った「gooサンクスチーム」というツイッターアカウントがあります。そこでの「ツイッター上の良い声の発言数の推移」というデータが、成果として分かりやすいです。
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このデータを見ると、2012年10月にツイッターアカウントがスタートしてから良い発言数が伸びていき、2014年10月の「gooアンバサダープログラム」運営開始後も、さらに良い発言数が伸び続けています。この「右肩上がりの継続」が、成果として挙げられると思います。

ここで注目すべきポイントは、右肩上がりのツイート全てがアンバサダーからの発信ではないという点です。つまり、ツイッター上で傾聴と会話を行い、加えて「gooアンバサダープログラム」に取り組んだことで、少なくともツイッター全体で「良い声」が増え続けている、ということがこのデータからわかります。

藤崎:レピュテーションの形成という意味でとても興味深く、貴重なデータですね。つまり、取り組みが全体に影響を与えて、ツイッターの良い発言が増加し続けているということですよね。こういう結果が出たのは、すごいと思います。

千田:ユーザーとのコミュニケーションやリレーションにはきちんとした意味があり、成果があるということがわかりますよね、ありがたいことです。

グラフ内に横に一本赤い線がありますが、このラインが当初目標にしていた「発言数」です。実数はお伝えできませんが、この数を超えることが目標でした。今やこのラインを大きく超えています。

ちなみに、目標を超えた後に一度、踊り場を迎えています。しかし、「gooアンバサダープログラム」を行った後はさらに伸びていきます。

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藤崎:これは施策を行う側からすると勇気をもらえるデータですね。取り組みを行うことで、全体の底上げになるということがわかります。

千田:ただ、2015年の7月から10月までは発言数が落ちていますが…。

藤崎: そうですね、一旦下がってしまっているのは意外とシンプルな理由かも知れません。例えば、その時期にネタになる情報が少なかったとか。

千田:そうかも知れませんね。いずれにしても、目標ラインを超え、右肩上がりに発言が増えているという点が成果です。あとはNPS®スコアが大きく伸ばせればいいのですが、まだ劇的な成果と言えるほどまでではありません。アンバサダープログラムがさらに機能してくれば、上ってくるのではないかと考えています。

アンバサダーは今後に向けた財産そのもの

千田:インナー向けの成果としては、私たちにアンバサダーという特別な関係が加わったことだと思います。つまり普通のユーザーと接する場合は、どうしても社外の人という距離感が存在します。一方、アンバサダーの場合は、社員ではありませんが、社外にいる外部社員のような感覚で接することができます。厳しいご指摘もgooを応援してくれているがゆえですし、gooの良さをすすんで第三者に伝えていただいています。

これは大変ユニークな関係です。社外にそういった応援団のような関係がいて、サービスの啓蒙やプロモーションに一緒に取り組めることはありがたいです。このアンバサダーの存在は、実際に社内の意識を変えています。

藤崎:社員にとっての、よい刺激になるのですね。

2.4

千田:一般のユーザーに対した時と、アンバサダーと対した時を比べると、後者の方が情報を主体的に取りに来てくれている実感があります。イベントでのアンケートもそういう結果が出ていますし、実際に情報を吸収したあとは、みなさん積極的に発信しています。それはオンライン上の調査からも確認できています。アンバサダーとのリレーションには、今までにない熱量を感じますので、接した社員はみんな刺激を受けています。

藤崎:好循環が生まれているわけですね。

新規事業の横展開でもアンバサダーが活躍

藤崎:ところで2015年から、格安スマホというカテゴリーで「gooのスマホ」の提供を始めましたよね。アンバサダーの反応はどうなんでしょうか。

千田:Webのオンラインサービス「goo」に加えて、デバイスも含めたサービスも始めたということで、アンバサダーの方を発表会に招き、詳しい説明を行いました。アンバサダーの皆さんはよく理解してくださり、情報発信もしています。

藤崎:なるほど、発表会に招待したのはいいですね。他には「gooのスマホ」の端末を、アンバサダーの方にモニターとしてお貸ししていますよね。

千田:アンバサダーイベントは東京で行うことが多いので、特に地方の方を意識してモニターを行っています。まずは、アンバサダーの皆さんに良さを実感してもらうことが目的です。もちろん、みなさん使いながら愛着や実感のこもった情報を発信しています。ありがたいことです。

藤崎:「gooアンバサダープログラム」が、他社に比べてユニークなのは、さまざまな「goo」というサービス群があることですね。ポータルサイトの「goo」はもちろん、「教えて!goo」、「goo辞書」など一つひとつの具体的なサービスにもファンがいます。さらに「gooのスマホ」という携帯端末への横展開もありますし、スマートフォンの「gooアプリ」のファンもいると思います。各ファンとの関係を作っていき、全体としてのCSを上げるという目標を持っているのが、他社のプログラムとは大きく違いますね。

千田:いい点をご指摘いただきました。実際のところ、一つひとつの個別のサービスにファンはいるんですが、その方が違うサービスに触れる機会は意外と少ないのです。そこで、アンバサダープログラムによって各サービスのアンバサダーが横断的に集まることは、全体としてとてもいいことなのです。

アンバサダー一人ひとりにgooのイメージがありますが、いろんな人に触れることで、今まで知らなかったgooのサービスを知ることができるからです。「アンバサダーイベント」のワークショップも、「他のサービスを知る」という点を意識して運営しています。まず、アンバサダーの方にそういう“オールgoo”を理解してもらい、複合的に情報発信してもらえればいいなと思っています。

藤崎:上位概念の大きなブランドであるgooブランドでアンバサダープログラムを運営しているので、枝葉に分かれた全てのサービスに対してアンバサダーの皆さんが力になってくれるのですね。こういった在り方はなかなか難しいと思います。“オールgoo”として力を結集しているというのはひとつの理想的なカタチですね。

アンバサダーの意見を取り入れたサービス開発が目標

藤崎:現在の課題を教えてください。

千田:まだやれることはあります。アンバサダーの気持ちを理解した施策を、もう一ひねり二ひねりしていきたいと思っています。

個人的には、今後はもっとWebの会社らしい方法で、アンバサダーとのリレーションができればと思っています。オンラインの取り組みをもっと増やすことができれば、地方や、忙しくてイベントに参加できない方も関わることができるからです。実際、イベントに参加できる人は限られているので、どうしたら熱量の高い方々に今まで以上に参加してもらえるのか、オンライン・オフラインを含めたコミュニケーション施策を追加できたらと思っています。

藤崎:せっかく「goo」という自社メディアがあるのですから、そこを使って、『グランズウェル』の5ステップの第4ステップ目の「支援戦略」もできそうですよね。

千田:そうですね。例えばgooのサービスそのものについてのQ&Aのコーナーがありますが、そこで一般の方々から寄せられた質問に対して、アンバサダーの方に答えてもらうとかあるかも知れませんね。gooポイントが貯まったけど使い方がわからないとか、gooブログの機能や使い方がわからないなどの質問に対してです。
その発展型としてgoo全体の施策に関して、自社メディアを使ってアンバサダーのみなさんから、一般の方々へのサポートができればさらにいいですよね。もし実現できれば、理想的な「支援戦略」だと思います。

藤崎:アイディアとタイミング次第ですが、可能性はたくさんありますね。

千田:『グランズウェル』の5ステップ目、「統合戦略」もいつか実現したいステージです。今後、新しいサービスを提供する場合、内容やUIなどでアンバサダーの意見を取り入れることができればいいですよね。できるだけみなさんの思いは反映させたいのですが、技術的な問題もあり、全てのご意見を取り入れるのは現実的には難しいため、そこが悩みどころです。

『グランズウェル』(シャーリーン・リー&ジョシュ・バーノフ著):ソーシャルメディア戦略の基本が書かれた名著。
藤崎:今後の抱負を教えてください。

千田: 2つの抱負があります。1つ目は、顧客満足度のさらなる向上です。今まで色々取り組んできたので、もちろん向上していますが、CSの取り組みに終わりはないということです。2つ目は来年3月の「goo20周年」に向けた取り組みです。

おかげさまで、gooは来年3月に20周年を迎えます。次の20年に向けて、アンバサダーの方々とどう交わりながら新たな価値を生み出していけるのか、まだ先は見えませんが、その実現に向けて進んでいければと思っています。

藤崎:今日は貴重なお話ありがとうございました。

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今回のポイント
・成果は「良い声」の継続的な増加
・アンバサダーは今後に向けた財産そのもの
・新規事業の横展開でもアンバサダーが活躍
・アンバサダーの意見を取り入れたサービス開発が目標

今回のまとめ
今回、公表されたデータは大変参考になるものでした。ツイッター上で企業が「傾聴」や「会話戦略」を行い、さらに「gooアンバサダープログラム」を開始したことで、よい発言が増え続けているのです。これは「一部に対する何らかの取り組み」には、「全体に影響を与える牽引力」があるということです。また、ツイッター上の発言はアンバサダーだけのものではないので、まさに影響力が増幅していることがわかります。

新規事業に対してアンバサダーが行為的に応援してくれたのも納得でした。これはgooの特徴である「親しみ、温かみ」というキーワードのままに、gooがおこなう事業そのものに賛同の意を表すアンバサダーが多いとうことだと思われます。CSの取り組みに終わりがないというのも、まさにその通りです。千田さんとgooの取り組みには、これからも目が離せないと思いました。

※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。

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2016年7月15日


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