監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第17回)推奨の金銭的価値①売上価値

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書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。

アンバサダーがもたらす価値は大きいことがわかっています。しかし実際にはどのくらいの金銭的な価値をもたらすのか。今回も引き続きこの点に着目し、本書からの抜粋をご紹介します。

アンバサダーマーケティング

■推奨の金銭的価値

ネット上でのアンバサダーにはどのくらいの金銭的な価値があるのか、またアンバサダープログラムの金銭的な価値を測るにはどうすればいいか。それを問われた著者のフェジェッタ氏は、「ではあなたの会社の評判には、どのくらいの金銭的な価値があると思いますか?」と答えています。ちょっと嫌未味のある返答ですが、企業やブランドの評判は何にも増して貴重な資産だということです。

実際のところ、推奨価値の算出にはさまざまな要因が寄与してきますし、現在、業界標準となるような価値算出方法が確立されているわけではありません。しかし本書ではさまざまな角度から推奨の金銭的価値について語られています。以下は大変参考になるのではないでしょうか。

■1%の驚き

本書で紹介されているレピュテーション・インスティテュートによると、会社の評判が1%改善すると、時価総額は1%増えるそうです。ウォールマートの評判が1%改善すると、時価総額は2億ドル増加することになるそうです。

これは、よく考えればとてもすごいことなのではないでしょうか。

■推奨の価値

アンバサダープログラムのROIを計算するには、まずこのプログラムの金銭的価値を推計あるいは測定する必要があります。推奨の価値は、[1]「売上価値」と、[2]「メディア価値」を合算したものです。この2つを合算した結果が「総合推奨価値(TAV)」となります。

■[1]売上価値

売上価値は、アンバサダープログラムやキャンペーンによる売上高へ影響です。以下の項目のうち、いずれか1つ以上を分析することで求められるそうです。

  • アンバサダーによって獲得された新規顧客の総数
  • その新規顧客からの一定期間(12か月など)の売上高
  • その新規顧客の顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)の総額
  • 推奨による売上高(ここにはアンバサダーのソーシャルメディアからの売上高に加えて、アンバサダー自身の購入額も含む)
  • アンバサダーに起因する紹介客の総数と価値
  • アンバサダーに起因する購入検討者のクリック数と価値
  • CPAへの影響(推奨の結果、CPAは低下しているか)
  • CPL(推奨の結果、CPLは低下しているか)

■売上価値の評価方法は簡単

アンバサダープログラムやキャンペーンの売上価値は、きわめて簡単に計算できるそうです。例えばアンバサダーがシェアするコンテンツやプロモーション情報に専用のプロモーションコードをつけるという方法が紹介されています。つまり、そのコード番号のクーポンがどれだけ利用されたかを追跡すればいいということです。

そのタイプのトライアル券、クーポン券の配布は専用のコードを使うことで、会員獲得につながったルートを把握することができる。

■顧客生涯価値を使って推奨の売上価値を評価する

本書では顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)を使ってアンバサダープログラムの価値を測るという考え方を推奨しています。つまりたいていの業界・業種において、アンバサダーによって獲得された新規顧客は一度しか商品やサービスを利用しないわけではなく、何年にもわたって利用し続けるわけです。従ってアンバサダープログラムの売上価値を正確に測ることができるからです。

特に顧客が継続的に利用料を払い続けるような商品やサービスを提供する業界では顧客生涯価値でアンバサダーの売上価値を測るのが妥当だろうと解説されています。ケーブルテレビや衛星テレビ、フィットネスクラブの利用料金や会費などがこれにあたるそうです。

一例をあげると、フィットネスクラブ会社の平均的な顧客が、会費や利用料で年1200ドルを使うとします。平均的な入会期間が5年とすると。会員ひとりあたりの総売上高は6000ドルとなります。新規顧客の獲得コストが500ドルとすると、顧客生涯価値は5500ドルとなります。

■これからは顧客生涯価値

企業のマーケティング担当者の多くは平均的な顧客の生涯価値を把握していない、という指摘もあります。顧客生涯価値という言葉を知らない人もいるそうです。そのような場合には、平均顧客単価のように簡単に入手できるデータで代用するのがよいだとうとアドバイスされています。平均顧客単価とは顧客が商品やサービスに支出する平均金額です。

次回は、「推奨の金銭的価値 [2]メディア価値」について解説します。お楽しみに!

 

アンバサダー・マーケティング

ロブ・フュジェッタ
日経BP社

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2014年7月18日


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