監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第16回) 衝撃・アンバサダーには平均的顧客の5-7倍の価値

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書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。

例えばホテルやレストラン、企業向けソフトウエアという3つの分野の事例では、アンバサダーには表題の価値があることが本書で紹介されています。以下、アンバサダーの価値の評価方法が具体的に紹介されている章からの抜粋です。

■ホテルのアンバサダーの場合

あるホテルの場合。
平均的な顧客は、600ドルを支出する(滞在1回あたり200ドル×3回)。
ここには部屋代や飲食代などが含まれている。一方、このホテルのアンバサダーは生涯にわたって6回利用するので、支出額は合計1200ドル(200ドル×6回)になる。

さらにトリップアドバイザー、 フェイスブック、ツイッター、さらにはオフラインのクチコミなどを通じて影響力を行使した結果、3人をこのホテルに送り込む。この3人がそれぞれ生涯にわたって3回ずつこのホテルを利用すれば、ホテルの売上高は1800ドル増える(3人×3回×200ドル)。ここからアンバサダーの価値は3000ドル、すなわち平均的顧客の5倍となる。

■レストランのアンバサダーの場合

例えばレストランの場合。
あるレストランの平均的顧客は、生涯を通じてここで100ドル使う。(1回あたり25ドル×4回訪問)。一方、アンバサダーは生涯を通じて200ドル使う(1回25ドル×8回訪問)。それに加えて、アンバサダーはイェルプやオフラインでのおススメを通じて、5人の知人をこのレストランに送り込む。レストランにとっては500ドルの増収だ。この結果、この店のアンバサダーの価値は700ドル、すなわち平均的顧客の7倍となる。

■企業向けソフトウエアのアンバサダーの場合

あるソフトウエア会社の平均顧客の生涯を通じた支出額は30万ドル(3年間×10万ドル)。一方、アンバサダーは60万ドルを使う(3年間×20万ドル)。
それに加えて紹介、体験談、ケーススタディ、オンラインフォーラムでの好意的なコメントやデビュー、展示会や会議といったオフラインの場での推奨などを通じて影響力を行使し、4社のシステム担当者にソフトウエアを購入するように影響力を発揮する。この結果、ソフトウエア会社にとっては120万ドルの追加収入が発生する。(4社×30万ドル)。ソフトウエア会社にとってのアンバサダーの価値は180万ドルと、平均顧客の6倍になる。

■驚くことに以上の評価額は控えめだそうです

以上の評価額は控えめとのことで、理由がいくつか述べられています。例えば、ズーベランス社の調査によるとアンバサダーの多くは平均顧客の二倍をはるかに上回る金額を支出する。例えばCDWという企業のアンバサダーは平均顧客の14倍を支払うという、という調査結果が紹介されています。

他にはアンバサダーの信頼感、影響力、ソーシャルメディアでの交遊範囲の広さを考慮すると、アンバサダーのおススメによって商品やサービスを購入する顧客の数は、実際には上記の例より、はるかに多くなるのではないか、とも述べられています。

またアンバサダーの紹介で顧客になった人々は、自らもアンバサダーになる可能性が高いことがわかっているそうですが今回のズーベランスの調査結果に入れていないそうです。
以上のことより、アンバサダーには平均的顧客の5-7倍の価値があると本書では述べられています。

そもそもアンバサダーは実際の人間だけに、その行動範囲の拡がりによって推奨の価値は大きく変化します。また長い期間に渡って、推奨行為を行ってくれ、推奨価値を生んでくれることから、顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)に基づく価値の算出が大切という話ですね。

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

アンバサダー・マーケティング

ロブ・フュジェッタ
日経BP社

 

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藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2014年6月19日


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