監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第14回)アンバサダーは商品を買った人とは限らない

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書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。

少し難しい連載が続きましたので、今回はちょっとライトな内容です。「アンバサダー」に対する、ちょっと意外な視点をご紹介します。お気軽にお楽しみください!

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■購入しなくてもアンバサダー

改めてですが、海外で注目されている新しい顧客、アンバサダーとはブランドや商品、サービスに対して、積極的かつ自発的に応援してくれ、さらには好意的な発言や推奨行為をおこなってくれる「熱きファン」のことです。

アンバサダーがユニークなのは、見返りもポイントも、クーポンもキャッシュバックも求めずにブランドや商品の魅力を多くの人に語り、話題を広めてくれる点です。

そして時には腕利きのコピーライターも顔負けの説得力と魅力溢れるコンテンツを作り、自分のソーシャル・ネットワークで共有してくれます。その結果、圧倒的に効率のよい流通チャネルを生み出してくれたりします。

そのようにブランドや商品に素晴らしい「好意」を寄せるばかりか、実際に素晴らしい「行為」を行ってくれるアンバサダーですが、でもそれは必ずしもその商品の購入頻度とは関係がないという事実には、もっと注目が集まってもいいかも知れません。

それどころか、「商品を購入した人だけがアンバサダーとは限らない」もしくは、「一度も商品を買ったことがなくてもアンバサダーになり得る」と聞かされたら、あなたはどう思うでしょうか?「えっ?」と思う方いらっしゃるかも知れませんが、しかし現実的に考えると、これは納得度の高い話です。

たとえば、「クルマ」です。高額商品の代表とも言えるクルマは、一般的にはそう頻繁に買い替えるものではありません。数年に一度、買い替えるクルマですが、人はかなり明確に自分の好きなブランドというものを持っているものです。購入頻度とは関係がないという感覚がおわかり頂けると思います。

旅行についてはどうでしょうか。例えばカナダには一度しか行ったことがないが、でもカナダが大好きになってしまい、今でもカナダ旅行が忘れられない、誰かが海外旅行へ行くと聞けば、カナダ旅行の素晴らしさを積極的に人におススメするといった人は少なくないはずです。

■商品を持っていなくても、おススメはできる

たとえば、次のような記載が本書に出てきます。

「商品をたった一度しか買ったことがなくても、あるいは一度も使ったことがなくても、その商品やブランドのアンバサダーになることはできる。冒険心あふれる創業者リチャード・ブランソンに憧れているから(もしくはあんなふうになりたいと思っているから)、ヴァージン・アメリカを推奨するということもありえる。」

「もしあなたが社会問題を重視しているならば、その問題に熱心に取り組んでいるブランドをおススメするかも知れない。私がボディショップをおススメするのは、化粧品の品質テストに動物を使わないからで、ボディショップの店に足を踏み入れたことは一度もない。」

いかがでしょうか。まさに表題の、「商品を持っていなくても、おススメはできる」ということが実感レベルで納得して頂けるのではないでしょうか。この感覚は確かに実際の心理に近く、納得度の高い指摘だと思います。

■ブランドへの愛着や共感・賛同が持てれば、人はアンバサダーになる

もちろんアンバサダーは、常日頃から商品を購入してくれるいわゆるヘビーユーザーだったり、繰り返し購入してくれるリピーターだったりするのが理想です。しかし現実には必ずしもそうとは限らない、というわけですね。
持っていないけどとても好き、行ったことがないけどとても好き、滅多に食べないけどとても好き、入ったことないけどそのお店がとても好き、いつの日か欲しいと思っていてとても好き・・・。よく考えてみれば、そんな商品やブランド、場所などが思い浮かぶのではないでしょうか。

そう言えば私は子どもの頃、月が大好きで月面の地図を部屋に貼って毎日眺めていました。そしてクレーターの名前や地名を覚え、その魅力やNASAについて飽きずに友だちに話していたものでした。行ったこともないのに。

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2014年5月13日


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