監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第13回) 顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)との相性

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。

顧客生涯価値は、ライフタイムバリュー(Life time value)、LTVとも呼ばれ、近年はマーケティングを考える際の重要な視点です。アンバサダー・マーケティングを推進する底辺には、この考え方があります。あなたは顧客生涯価値を念頭にマーケティングを考えていますか?
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■アンバサダーとは顧客生涯価値に基づく優良顧客のこと

ブランドや商品、サービスに対して、ロイヤルティの高い顧客になってもらえれば、長期間にわたってリピート購入が期待できます。顧客生涯価値とは一人の顧客から長期的、もしくは生涯にわたって得られる利益を指標化したものです。具体的には、一回の購入額に、一生涯での購入回数をかけて算出し、さらにその顧客を獲得・維持するための費用合計を差し引いた累積利益額で求めることができます。当然、この値が大きいほど優良顧客と言えます。

この考え方が注目されてきた背景としては、プロダクト中心の従来のマーケティングから、顧客重視のマーケティングへのシフトがあげられます。企業が現在の繁栄だけでなく、将来的にも継続的に発展していくためには、顧客の満足度を継続的に高め、顧客生涯価値の高い顧客を確保していくことが重要である、とされています。

この観点から見ると、本書でいうアンバサダーは、間違いなく顧客生涯価値に基づく優良顧客と言えるでしょう。もちろんアンバサダーの大きな特徴は、その推奨行為にあるのですが、まずは何と言っても、そのブランドが大好きで、何があってもそのブランドを使い続けよう(購入し続けよう)という意思の持ち主だからです。

 

■アンバサダーを大切にすることは企業コスト削減につながる

この顧客満足度を高めるための方法ですが、従来は顧客満足度の向上につながる施策が大切だと言われてきました・・・。これは考えてみれば当たり前と言えかも知れません。

しかし当連載の第9回で指摘させて頂いた通り、顧客維持のための過剰なインセンティブの提供や、不用意なディスカウントの乱発は、利益を減じることになってしまいます。また、それらのインセンティブを期待する顧客の増加は、ブランドにとっての真のファンを獲得したとは言い切れない別の問題を抱えてしまうことになってしまいます。

長期的な顧客生涯価値の向上施策としては、新規顧客と既存顧客維持等のコストをできるだけ抑えながら顧客のリピート率・顧客単価を上げていくことが必要だと言われています。さらに留意しなければならないのは、顧客獲得率・離反率、さらには顧客維持率のバランスだとも言われており、単純に顧客満足度をあげてリピート率を増やしていけば良いという話ではないわけですね。

ここで注目していいのは、「新規顧客獲得や、既存顧客維持」には、何らかの企業コストがかかるという視点です。対してアンバサダー・マーケティングの考え方では、熱きファンにブランドや商品を推奨してもらうことが柱のひとつになっており、その企業コストを抑えることができるという点は、注目すべきメリットではないでしょうか。

本書にも、優秀なアンバサダーは優秀な宣伝マンであり営業マンであるという記載が出てきます。また、「アンバサダーを生み出し、活躍してもらうというのは、何年にもわたって持続性のあるマーケティング資産を手に入れることにほかならない」と書かれています。

つまりアンバサダーという存在は、その人本人が優良な顧客でありながら、さらに長期にわたって企業のマーケティングコストを削減してくれる優秀な資産だというわけです。

 

■一生のおつきあいを重視する時代。

今さら言うまでもないことですが、マーケティングというものは厳しい市場競争おいて企業利益を向上させるために、あらゆる努力をおこなうものです。それが顧客志向の時代となり、顧客からの信頼獲得が重視されるようになり、さらにインターネットやソーシャルメディアの普及と共に、ユーザーとの長期に渡るリレーションやエンゲージメントが重視されるようになったことすべては、実は大きなひとつの流れとも言えます。

企業とユーザーが、共に同じ時代を生きるものとしての共有感を持ちながら関係を構築するアンバサダー・マーケティングは、近年、重視されている顧客生涯価値という視点にもマッチした取り組みとも言えますが、その理由は、「どちらも大きなひとつの流れとして」、時代の中で自然発生的に生まれたものだからではないでしょうか。

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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2014年4月30日


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