コカ・コーラとスターバックスに学ぶ、バナー広告では得られない「メディア運営の可能性」

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企業が自社メディアに投資すべき理由

前回のコラムでは、メディアのバナー広告を買う予算を自分たちのメディアを作るのに投資したことで成果を出し始めている事例をいくつかご紹介しました。

ただ、ここで勘違いしていただきたくないのは、バナー広告とオウンドメディアの単純比較だけが「オウンドメディアの価値」ではないという点です。

もちろん前回ご紹介したガシー・レンカー・ジャパンのニキペディアの事例のように従来のバナー広告による広告効果を自社メディアによって単純に上回ってしまえるのであれば、ガシー・レンカー・ジャパンが決断したように単純なバナー広告の出稿をやめ、その予算を自社メディアの運営に回したり、ユーザーへの割引きクーポンで還元したりという選択肢が出てきますので、それに越したことはありません。

では、自社メディアがバナー広告を投資対効果で上回れないのであれば自社メディアを運営する意味は全くないかというと、それはもったいない勘違いです。

そこで、今回は単純なネット上の投資対効果以前のレベルで、自社メディアに投資をしている企業を二社ご紹介しましょう。まず世界的にも有名な自社メディアと言えるのがコカ・コーラのグローバルサイトである「Coca-Cola Journey(コカコーラ・ジャーニー)」です。

Webサイトをメディアに変えたコカ・コーラ

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実際にこの画像をクリックしてサイトに行って、縦にスクロールしてみて下さい。ぱっと見ると、どこかのメディアサイトに見えると思いますが、このサイトはれっきとしたコカ・コーラのグローバルのトップページ。

通常、飲料メーカーのWebサイトというと、自社の商品の画像一覧や、広告の画像が並んでいるイメージを持たれる方が多いと思いますが、コカ・コーラは自社のトップページを思い切ってメディアサイトに変えてしまったのです。

コカ・コーラでは2011年の夏に「Content 2020」という宣言をし、“Creative Excellence”から“Content Excellence”へという方針転換をしたことで有名です。つまりコカ・コーラは広告クリエイティブに注力するのではなく、コンテンツに注力するという宣言をしているのです。

実際に2011年に公開された動画「Content 2020」が、今もYouTubeに上がっていますからこちらをご覧いただくのが分かりやすいかもしれません。

2012年にリニューアルされた「Coca-Cola Journey」はそのシンボル的存在のサイトといって良いでしょう。そこには、ソーシャルメディアの普及により、世界中のユーザーがつながり、会話をしているというのに、企業は今までのパンフレットのような静的サイトのままで良いのか?一方通行の情報発信で良いのか?もっとダイナミックな双方向のストーリーテリングができるようになっていかないといけないのではないか?という問題提起があります。

ここまでドラスティックなサイト変更はアメリカの話であって、日本では無理、と思う方もいるかもしれませんが、日本コカ・コーラのWebサイトも2013年から、グローバルサイトと同様の形式にリニューアルされ、すでに2年以上運用されています。

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なんでも当初日本はそのままグローバルのアプローチを踏襲する予定ではなかったそうですが、企業サイトの役割を「ブランドの新たなファン作り」と定義して議論した結果、最終的に現在の形でストーリーテリングに注力することが重要ではないかという結論に至ったそうです。

実際に日本コカ・コーラのサイトを見ていただくのが一番分かりやすいと思いますが、ストーリーのタブの中に並ぶのはコカ・コーラにまつわる様々な話から「アメリカの絶景スポット」や「ハッピーな夏の思い出づくり」まで、まさに「ストーリー」の数々。

日本コカ・コーラで「Coca-Cola Journey」のプロジェクトをリードしているのは広報チーム。当然、従来のバナー広告の置き換えを目指しているわけではありません。コカ・コーラが全国各地で展開する様々な活動を、関係者に正しく伝え、企業とお客様の絆を強めることを目指す、という目標設定をした結果、自然とこのストーリーを重視したアプローチに行き着いたそうです。

コカ・コーラとは異なるアプローチのスタバ

コカ・コーラとは全く異なるアプローチで、オウンドメディアへの取り組みをされているのがスターバックス コーヒー ジャパン(以下スターバックス)が取り組んでいる「TOKYOWISE」というWEBマガジンです。

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「ABOUT TOKYOWISE」を見て頂くと分かるように、このサイトはパラグラフと七洋が運営するWEBマガジンTOKYOWISEをスターバックスが一社スポンサードする形になっています。
そういう意味では、厳密な意味でのオウンドメディアではありませんが、企業がメディア作りを行う一つの選択肢として注目すべきアプローチと言えると思いますのでご紹介したいと思います。

スターバックスはTwitterやFacebookの公式アカウントに100万人単位でフォロワーがいることで有名です。ソーシャルメディアのアカウント運営においても代表的な成功事例と言えるでしょう。

ただ、実はスターバックスとしては公式アカウントの規模が大きくなることである意味マス化し、新商品発売などのメジャーなネタでなければ大きな反応が得られなくなっているという感覚があり、自社アカウントでのコンテンツ発信だけでは情報感度の高い人を満足させられていないのではないか、という問題意識があるそうです。

そこでスターバックスの長見明マネージャーの言葉を借りると、この課題の解決方法に対する一つのチャレンジとして「ハイエンドな雑誌の広告枠を買う代わりに、媒体のスポンサーをする」というアプローチにチャレンジしてみているそうです。

ネットメディアにおいては、どうしてもPVが広告収入に連動しているため、炎上ネタを中心に運用されるケースもありますが、一社提供のWEBマガジンであれば、そうしたPVに左右されすぎないハイエンドな雑誌と同様のメディア運営が可能になります。

当然、TOKYOWISEに並んでいる記事はほとんどがスターバックスとは関係の無い記事ですが、スターバックスはもともと美味しいコーヒーを提供するだけの会社ではなく、顧客にとってのサードプレイス(第3の場所)を提供するというコンセプトを持っている会社です。

長見氏としては、TOKYOWISEの一社スポンサーを行うにあたっても、公式SNSとは違う新しいコミュニティをつくることで、公式SNSを通じたコミュニケーションとは異なるコミュニティへのリーチが可能になり、TOKYOWISEのコンテンツを通じてお客様に楽しんでいただく機会も創出できるのではないかという仮説を持って取り組んでおられるそうです。

当然スターバックスがこのメディアで目指しているのはバナー広告の置き換えではなく、スターバックスならではのメディア提供の支援と言えるでしょう。

デジタルマーケティングにおいては、ページビューやコンバージョンなどの効果測定ができるため、ついついそれらの指標ばかりを見てしまいがちですが、そもそも企業自身がメディアを運営できるということには、そういった直線的な売上貢献だけではなく、様々な可能性があるということを、両社の事例から感じていただければ幸いです。

※このコラムは、宣伝会議Advertimesに寄稿したものの転載です。

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amnblog • 2016年8月4日


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