アンバサダー思考録 第1回:ソーシャルの価値を「人軸」で考える(前編)

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|ソーシャルの取り組みにおける課題あれこれ

企業やブランドがソーシャルメディアを活用する取り組みは日を追うごとに活発化しています。各サービスの利用者も増加傾向にあり、従来マスメディアの接触時間が減る中、ソーシャルメディアに対する期待は高まっています。
一方、効果や運用、度重なる仕様変更やリスクなど様々な課題も浮き彫りになってきました。

ブログ、Twitter、Facebook、Google+やLINEなど次々と新しいプラットフォームが台頭する日本のソーシャルメディア乱立状況は、企業が活用する上で”常に新しいプラットフォームに対応しなければいけないのか?”という課題も抱えており、既に取り組んでいる企業からは「予算も人も増えないのに、プラットフォームばかり増えていて、リスクも含めてどこまで対応するべきか悩ましい」といった声も聞こえてきます。

取り組みを拡大している企業の担当者からも「Facebookで新規のいいね!数を増やすために投稿や広告を続けているが今のままでいいのだろうか?」、「様々なアカウント運営に取り組んではいるものの、今後どのように発展させたらよいのか?」といった相談をいただく機会も増えています。

ソーシャルメディアの活用について、一巡回って再度意義や目的を定義し直す必要に迫られている企業やブランドも多いのではないでしょうか。

 

|そもそも何が問題になりやすいのか

ソーシャルメディアへの取り組みを進める途中で当初の目的を見失ったり、目標の数値(Facebookのいいね!数やフォロワー数)に振り回されたりと、社内でもそれぞれの立場によって重視すべきポイントが異なる為に混乱が生まれる状況は、(ソーシャルへの取り組みに関わらずですが)よく起こりうる事だと思います。

特徴的なのは、数字が見える為にメイン目標になりやすいFacebookの「いいね!数」やTwitterの「フォロワー数」でしょうか。
数は多いけれど見ている(届いている)のか分からないという面では、「いいね!数」や「フォロワー数」と企業/ブランドが発行するメルマガの「購読数」と何ら変わらないとも言えます。
(Facebookに至ってはファン数の平均12%にしか情報が届いていないという情報(引用:techcrunch/2012.3.1)もあります)

ファンやフォロワー数を重視する1つの要因としては「人数が見える」という事もあるのではないでしょうか。企業のメルマガであれば通常購読数は利用者には分かりませんし、競合企業のメルマガ購読数も分かりません。しかしFacebookやTwitterなどでは、どのくらいの規模か「数」が見えるため指標にしやすく、目標(競合のFacebookページのファン数)≒目的(競合のFacebookページをファン数で抜くこと)になりやすい側面を持っています。もちろん「数」が多い事、増やしてゆくことを否定しているわけではありません。

大企業でなくとも投資した金額や、社内外のリソースを利用した情報発信には一定の見返りがないと続けられませんし、ファンの数は多いほうが良いことは間違いありません。
ただし、「数」や「獲得」でROIを計ると、沢山の人にメッセージを届けるのはマス広告が得意とするところですし、効率的に誘導する検索連動型広告の単価にはかないません。
(本来は自発的に行われているブランドへの発言に目を向けるべきですが、新規獲得が重視される場面では今ある資産に光があたることは少ないのが現状です)

つまり、単純なリーチや誘導単価では他のメディアに現状勝てるとは言い難く、ソーシャルメディア活用において「数」のみを追い求めるのは非効率的です。また、ソーシャルメディアでは中長期的に成果を出すのに向いており、短期間で山をつくるのに向いていません。

では、企業やブランドにとってソーシャルメディアを活用する価値・意義はどこにあるのでしょうか? 

 

|ソーシャルメディアの特徴は”傾聴”と”会話”

従来のメディアと比較しソーシャルメディアにはユニークな特徴が2つあると考えています。

それは、「利用者の”生の声”を聴くことができる」こと、もう一つは「利用者に話しかけることができる」ことです。

何を当たり前の事を、と思われる方も多いかもしれませんが、まだまだ中長期で実践し活用している企業は少なく、ソーシャルメディアへの取り組みも始めたばかり、これから取り組むといったステータスの企業やブランドも多いのが現状ではないでしょうか。

それでは、それぞれを見ていきましょう。

●「利用者の”生の声”を聴くことができる」

今までメーカー、ブランド担当者は「物言わぬ多数派」と呼ばれるような”何を考え・感じているか分からない消費者”に対して、様々な検討を重ね、商品を企画・開発・デザインし市場に投入してきました。

(物言わぬ多数派と言っても、実際には何も言わなかった訳けではなく、リアルでは商品についてのクチコミは日常的に生まれているので、企業側からみると”声を聴く術がなかった”というほうが実態かもしれません)

一方、利用者はソーシャルメディアの普及により、今まで「わざわざ言わなかったこと」を情報発信する機会が増えています。○○を食べた、○○を買った、○○に行った・・等、自らの体験や行動、感情などソーシャルメディアを通じてリアルタイムに発信・共有しています。

企業やブランドの担当者にとっては、何が支持されているのか、キャンペーンはどう受け止められているのか、改善点は何なのか、といった”生の声”が検索すれば無料で聴く事ができます。そして、ブランドについて発言してくれている人がどんな属性で、どんな嗜好を持っているのかなどをリアルタイムで知ることができるのです。そして、ツールの利用と適切な方針を決められれば、より多くの学びが得られることでしょう。

●「利用者に話しかけることができる」

もう一つ、他のメディアには無い大きな特徴は、ソーシャルメディアを通じて利用者に”話しかける事ができる”ということです。

テレビや新聞、雑誌などのメディアは一方的にメッセージを伝えるのには長けていますが、メディアを通じて相手と会話したり、利用者が疑問や問題を抱えてブランド離反するタイミングにサポートしてあげることはできませんでした。

ところが、ソーシャルメディア上では企業も一般の利用者と同じ土俵で会話に参加でき、(もちろんやり方次第ですが)企業側から特定のユーザーにアカウントを通じて話しかける事ができます。

例えば誤解が元で「もう二度と○○なんて買わない!」と友人・知人とつながりのあるソーシャルメディア上で発言している人を見つけた際にフォローしたり、喜んでいるファンを更に活性化することを促す事もできます。

企業視点で考えると非効率に感じる面はあるかと思いますが、その会話の相手の先に影響を受けやすい友人や知人が、数十人、場合によっては数百人単位でいることも考えられます。

つまり、「どんな人が何を言っているのか分かる」、そして「その人に直接アプローチができる」という、今までは無かった選択肢を企業やブランドが持ったことは大きな変化と言えるのではないでしょうか。

|ソーシャルの価値は”人”にあり

ソーシャルの価値が特定の人の発言まで把握でき、その人にアプローチできるとすると、今までの「マス的な広告手法や影響力の高い著名人から沢山の方に伝える」といった考え方に加え、「特定の話題(商品や関心事)に対して発言する人から、周りにいる友人や知人に伝える」というコミュニケーション手法を組み合わせることができるようになります。

時として企業からのメッセージが懐疑的な印象を持たれたり、情報過多のためスルーされるのに対し、身近な友人のお薦めや体験に基づいた情報に対しては検討・購入の障壁が低いことは多くのデータで語られています。

これは、その情報自体の価値もありますが、”誰が言っているのか”という情報の発信者と受け手の関係値によるところも大きな判断基準となっていることを物語っています。

「ランチでは○○を食べた」といった情報は発言者を知らない人からすると、正直どうでも良い、価値の低い情報といっても過言では無いと思います。

しかし、発言者の友達や同じ商圏で働く同僚にとっては、一転その情報が価値をもって反応を導いたり、コミュニケーションが生まれ、時には来店や購入といった行動も引き出します。

ここに、原点回帰ともいうべきヒントがあると考えています。

ソーシャルメディアによって、誰が自社のブランドについて好意的な発言をしているのか分かり、その発言者にコンタクトをする(会話をする)手段があります。

つまりソーシャルメディアへの取り組みは”人”にフォーカスすることで、本来の価値が得られ、成果を出せるのではないでしょうか。

特定のSNSプラットフォームや、リーチを極端に重視した施策ではなく、”人”に着目することで企業やブランドにとって、”本当につながるべき価値の高い発言者”を見つけることができると考えています。

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本コラムではソーシャルメディア等を通じて、企業やブランドにとってつながるべき価値の高い人のことを「アンバサダー」と呼ぶことにします。

「アンバサダー」の定義はもちろん企業ごとに異なるものではありますが、基本的には以下の3つのポイントで候補を抽出していきます。

・企業やブランドについて発言をしているか
 ・利用者であり推奨をしてくれているか
 ・発言に対して周囲の反応を導き出せているか

次回、ブランドのアンバサダーとはどのような人なのか、またどのようにして見つけていくのかについてお話させていただきます。

Author Profile

上田 怜史
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
代表取締役社長 CEO

商社にて建材を取扱い建設会社、設計事務所への営業活動に従事。 2004年シーネットネットワークスジャパン株式会社に入社し広告営業に従事した後。株式会社 ディー・エヌ・エーにて「モバゲータウン(現mobage)」の広告・企画営業を担当。2007年アジャイルメディア・ネットワーク株式会社入社。2009年3月取締役に就任後、2014年3月より代表取締役に就任。
企業やブランドの「熱量の高いファン=アンバサダー」とのコミュニケーション設計・支援、講演活動を行う。
茨城県 いばらきインターネットテレビ事業 検討委員会委員
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上田 怜史 • 2013年9月3日


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