アンバサダー思考録 第2回:ソーシャルの価値を「人軸」で考える(後編)

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前回のコラムでソーシャルメディア等を通じて自発的に発言し、企業やブランドにとって繋がるべき価値の高い人を「アンバサダー」としました。
今回はより具体的な「アンバサダー」の特徴や位置付けを考えていきたいと思います。

 

|インフルエンサー活用の課題とアンバサダー|

アンバサダーと比較されやすいのが「インフルエンサー」です。
※ここではインフルエンサーを特定の分野に詳しい専門家やネット上で強い影響力を持つ個人(芸能人やファッションモデル、スポーツ選手)と定義します。
インフルエンサーを活用したプロモーションでは、「クチコミは影響力のある個人から発生し、拡がっていく」という考えの元に、芸能人や著名人、専門家からテレビや新聞、雑誌などのメディアだけでなくブログやTwitterを通じて情報発信をしてもらうという手法です。

手法自体は今でも多く活用されていますが、あえてインフルエンサーを活用したプロモーションにおける課題を考えてみたいと思います。

インフルエンサーの起用はコスト面から考えると全ての企業/ブランドが選択できる手法ではありません。また、施設や店舗など商圏が限定されている業態では、(仮に)話題になったとしても恩恵を十分に受けられないことも考えられます。

 

また、インフルエンサーは全ての商品に興味があり発言している訳ではありません。どんな情報を発信しても反応が高い人は本当に希少です。
しかし、企業側の要望としては「影響力のある人に話題にしてもらいたい!」という要望によって一部のインフルエンサーに案件依頼が集中することも多く、「人気があり、ブログのページビューは多いのに思ったような成果が出ない」といったミスマッチが原因で成果が出ない状況も見受けられます。

 

ソーシャルメディア上の発言を分析すると、影響力の高いインフルエンサーが発言するよりも、繋がりは多くないものの、自発的にブランドに言及する熱量の高いファン=アンバサダーが多くの反応を得ている現象が起きています。

 

常に新規獲得を求め、インフルエンサーから話題を拡がることを期待するのではなく、ソーシャルメディア上で継続的に言及・推奨してくれているアンバサダーの資産的な価値に着目することは、ブランドにとって非常に有益だと考えています。(そして、アンバサダーは多くの場合ロイヤルユーザーでもあります)

 

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|“クチコミ”は様々な場所で語られている|

 

 情報はインフルエンサーから拡がって、感度の高い一般の人達に伝播していくという図式はとても理解しやすい考え方ではありますし、(念の為断っておきますが)インフルエンサーによる情報発信は組み合わせによっては非常に有効に機能すると考えています。私自身も体験した機会があるのですが、インフルエンサーの専門領域に“はまった”際の力は大きく、これからも活用される手法だと思っています。

 

一方でブランド(製品やサービス)について推奨する行為はインフルエンサーに限定されたものではない事も事実です。
1つのヒット商品が生まれる過程で特定のインフルエンサーがキッカケになる事はありますが、全ての購入がインフルエンサーのファンであるケースは希でしょう。

現にソーシャルメディアを通じて会話の中身を見ることができるようになった現状では、ブランド利用者による発言によって、友人や知人の態度変容の有無や過程を見ることができます。

 

ブランドに合致するインフルエンサーの母数は往々にして希少ですが、この熱量の高いアンバサダーはインフルエンサーよりも多く存在し、様々なコミュニティに所属しています。

 

つまり、ブランドの検討や推奨、態度変容はインフルエンサーとそのファンとの間だけではなく、別の場所でも同時多発的に、かつ様々な規模で起きているのです。

|アンバサダーとインフルエンサーの位置付け|

 

 

 ここまでインフルエンサーとアンバサダーの違いについてお伝えしてきました。

 

「インフルエンサー」は有名人・著名人という”知名度やファンの多さをベースにした影響力を重視”するのに対して「アンバサダー」は”特定の話題・ブランドについて自発的に言及するファン度を重視”しているという差があります。

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 まずリレーション取るべきは右上の「ファン度も高く、影響力も高いエリア」にいる人達でしょう。今までのインフルエンサー施策と大きく異なるのは、影響力が高いからだけでなく、前提として『ブランドについて言及をしている』人が対象にしているところでしょう。
どんなに影響力が高くても、ブランドについて言及をしていない人は対象から外れます。

 

このエリアにいる人達は一定の読者(ファン)を抱え、ソーシャルメディアでも積極的に発言しています。そして多くの機会が得られる為、非常に多忙なケースがほとんどです。つまり、企業としては繋がっておきたいが絶対数自体が少なく、ハードルも高いと言えます。

 

では、次に重要視すべきはどのエリアでしょうか?

 

選択肢は2つ、「インフルエンサーにファンになって発言してもらうか」、「アンバサダーの発言を活発化させるか」です。

 

 

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 インフルエンサーを活用するハードルの高さやミスマッチを考慮せずとも、優先すべきは4象限左上の「言及してくれているファン=アンバサダー」です。
ソーシャルメディア上の影響力はインフルエンサーにかなわなくても“影響を受けやすい身近な人達と繋がっている関係値”の価値は非常に高く、会話を通じて推奨や態度変容を導きやすいのが特徴です。

 

やや乱暴ではありますが、インフルエンサー、ユーザー(利用者ではあるが発言・推奨しない)、アンバサダー(自発的に言及し推奨をする)それぞれの特徴をまとめてみました。表からも分かるようにそれぞれの特徴があり、役割の考え方や望ましいコミュニケーションの取り方にも差がありそうです。

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|アンバサダーを巻き込んだ活動をどう推進すべきか|

 通常のコミュニケーションやキャンペーンは「一定の期間に認知や話題を最大化し新規獲得する」ことを目的にしているのに対し、アンバサダー施策は「既に言及しているファンを継続的に発掘・活性化し資産化する」ことを目的としています。

 

この2つは別々に実施するものではなく、掛け合わせて実施することが重要になります。

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 このプログラムの目的は、より多くのアンバサダーとの繋がりを資産としてデータベースに蓄積する事で、キャンペーンの有無に関わらず優良な発言をコンスタントに発生させる事ができる状態をつくることです。

 

アンバサダーとの繋がりを蓄積する活動はソーシャルメディアのコミュニケーションを通じて発言者を分析しますが、アンバサダー候補を発見する過程ではマス施策を含めた現状のコミュニケーション全てが対象となります。

運営するソーシャルメディアの公式アカウントだけでなく、自社のECサイト会員、メルマガ購読者、アフィリエイトプログラムの参加者、リアル店舗を訪れる人といった、「既に接点のある顧客や会員リスト」の中にアンバサダーが含まれている可能性が高く、ソーシャルへの取り組みを推進する上で、自社の資産である顧客やサービスの登録者の価値を再定義することもアンバサダー施策の重要なポイントとなります。

 

また、既存のコミュニケーション活動との連携も強く意識する必要があります。広報リリースやwebニュースを引用してコメントするユーザーや、TVCMを見た人がソーシャルメディア上で発言しているなど、全てアンバサダー候補として分析対象となるからです。

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 全てのコミュニケーション延長線上に、優良なアンバサダーを発掘・交流するという蓄積型(ストック)の考え方を持つ事で、ソーシャルへの取り組みをリーチ重視の「いいね!(フォロワー)至上主義」から、購入者・利用者による良質でコンスタントに反応が得られる情報発信プラットフォーム構築への転換を促すことができます。

 

もちろん短期間で満足のできる規模に到達することが難しいケースがほとんどですが、アンバサダーとの繋がりを着実に蓄積し、累積で右肩上がりにしていくことは十分に可能ですし、マスでのプロモーションと連携したコミュニケーションを通じて成果を高める事も可能でしょう。

 

ここまでアンバサダーの考え方についてご説明しましたが、次回以降はアンバサダー候補の見つけ方からリレーションの方法についてご紹介していきます。

Author Profile

上田 怜史
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
代表取締役社長 CEO

商社にて建材を取扱い建設会社、設計事務所への営業活動に従事。 2004年シーネットネットワークスジャパン株式会社に入社し広告営業に従事した後。株式会社 ディー・エヌ・エーにて「モバゲータウン(現mobage)」の広告・企画営業を担当。2007年アジャイルメディア・ネットワーク株式会社入社。2009年3月取締役に就任後、2014年3月より代表取締役に就任。
企業やブランドの「熱量の高いファン=アンバサダー」とのコミュニケーション設計・支援、講演活動を行う。
茨城県 いばらきインターネットテレビ事業 検討委員会委員
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上田 怜史 • 2013年9月3日


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