第5回:スターバックスの「ありがとう」を集める取り組みと4つの効果

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今回はコーヒーチェーン「スターバックス コーヒー」の1店舗で見かけた、小さいけれど、たくさんの示唆を与えてくれる取り組みを紹介します。

|店舗を利用するアンバサダー(ファン)から 「ありがとう」の声を集める|

私が住んでいる街はいわゆる“ベッドタウン”と呼ばれるような住宅地で、商圏としても都心と比べたら狭いエリアです。

そんな街にあるスターバックスの店舗を訪れた際、スタッフの方から会計時にこんな依頼をされました。

 

「来週この店舗が14周年なんです。良かったら、一言でも、何でもいいのでメッセージいただけませんか?」

 

店内には「メッセージの花」が咲く前の木が壁に貼り出され、みんなからのメッセージで満開にすることをゴールにしていることが一目で伝わります。

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スタッフの方に話を聞くと、この取り組みは店舗のスタッフ数名で企画を立てたそうで、「アイデアを出した自分達でもうまくいくか、これで本当に良かったのか自信がない」とのこと。

 

私は普段からこの店舗を利用し、訪れた際に情報を発信をしている、言わば“この店舗のアンバサダー”であるため、快く協力することにしました。

(一応、メッセージを書いた人には小さなプレゼントが提供されています。ですが、それ目当てにやる人はいないレベルのインセンティブで、非常にバランスが良いなと感じました)

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この取り組み自体は店舗のスタッフから、ボトムアップで立ち上がった、一見小さな取り組みです。

一方、この取り組みにはファンとのリレーション(交流・活性化)をする上で、大切なヒントがあると感じました。

これは大手の多店舗チェーンだけでなく、地域で商売をする様な商圏が限定されたビジネスでも応用できる施策だと思います。

「目の前の顧客から満足した声を集める」という取り組みに、どんな効果があるのか考えてみましょう。

|ファンからの「ありがとう/おめでとう」を集める4つの効果|

●周囲への波及

普通に考えて顧客にメッセージを依頼し、書いてもらうのはハードルの高い取り組みです。

だからこそ、実際に依頼されて渡すのを見た際に“みんな協力的だな”、“この店は愛されているなあ”と周囲に強烈に伝わりますし、実際に満開になったメッセージツリーはファンの多さを伝える証(あかし)となるでしょう。

また、14周年であることの告知を通じて、アンバサダーによるクチコミの拡散が期待できます(その地域で暮らす商圏内の友人や家族に、です)。加えて、自らが参加した結果を確認するための再来店や、場合によっては誰かに語る為に同伴来店効果もあるかもしれません。

●アンバサダーの活性、ファン度の深化

ブランドについて考えて、メッセージ(文字)を書くという一連の行為は、“自らがファンである”ことを自覚し、『そのブランドのどこが気に入っているのか』、『そのブランドは自分にとってどんな存在なのか』といったブランドと自分の関わり、気付きを与えます。

結果的に、利用者が「ここがいい!」「だから好きなんだ!」と人に話すことができるアンバサダーを増やす事に貢献する施策であると言えます。

●+αコミュニケーション(会話)の発生

注文時のレジで取り組みを紹介する時や、メッセージを書き込んだ花びらを渡した際に交わされる言葉ほど、特別な価値を持つコミュニケーション(会話)は無いのではないかと思います。

店舗スタッフの依頼を快諾する子連れの女性、書いたメッセージを笑顔で渡す常連の初老男性、そしてメッセージカードを受け取り笑顔で感謝を伝えるスタッフ・・・そんな微笑ましいやり取りが生まれていました。

こういった普段の注文→提供を超える「+αコミュニケーション」を発生させる価値は、他の競合選択肢と比較した際に大きな差別化要因となり得るでしょう。

●スタッフのモチベーション向上

“外向け=対お客様”に行っている取り組みではありますが、“内向き=店舗で働いているスタッフ”のモチベーションを高める効果があることも忘れてはいけません。一連の過程を通じて『自分たちが提供している価値がコーヒーという商品以上のものである』という事を再確認する特別な機会になるでしょう。

そして、そのモチベーションはサービスの質向上に繋がったり、ファンの支持が自信となり、“もっとお客様に喜んでほしい!”という気持ちが新たなアイデアを生むキッカケにもなるのです。

|製品・サービスの“向こう側”を伝える|

通常、顧客/利用者から見た企業やブランドとの接点は「製品」や「サービス」、そして「店舗」です。

普段の接点・接客では、企業やブランドがもつ正しい価値や、こだわりを伝える事は困難ですが、こういった記念日等を通じて普段は伝わらないことを伝えることは、アンバサダーになってもらう上で重要な役割を果たします。

 

今回の取り組みは、言わば製品やサービスの“向こう側”を伝える施策です。

 

普段は見えない、知らない事を伝えることで、より興味を持つようになったり、安心や信頼、親近感を醸成します。競合となる企業やブランドがある状況下で、「私は●●●が好き。なぜならば■■■だから」という「選択する理由」や「支持する気持ち」を自ら認識してもらうことは、非常に重要な価値を生みます。

 

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このような取り組みを「キャンペーン」「プロモーション」として考えると、“同じ建て付けではできない”、“真似したくない”と思われる方もいるかもしれません。

しかし、企業やブランドにとってファンは異なり、思いも様々ですので「アンバサダーとのリレーション」として考えれば、ファンが喜び、活性化する同様の取り組みは普遍的な価値があるため、どんどん取り入れるべきだと考えています。

特に店舗業態のような顧客接点がある場合は「ネット上の“誰か”ではなく、目の前のお客様に推奨者となってもらう為に何をすべきか」という視点を忘れてはいけません。逆の言い方をすると、「目の前にいるお客様こそが、一番推奨してくれる可能性が高い人である」と考えれば、日々の接点の大切さを見直す良い機会になりそうです。

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こちらの店舗ではメッセージ募集を開始から10日間後に14周年の記念日を迎えるそうです。
メッセージツリーがファンの言葉で満開になった姿を、私も見に行きたいと思います。

次回の後編では、今回紹介した顧客や利用者の「ありがとう」や「おめでとう」をリアルで集める施策を、デジタル含めて「どの様に発展することができるか」、「どうやって施策の効果を高める方法があるのか」について考えてみたいと思います。

Author Profile

上田 怜史
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
代表取締役社長 CEO

商社にて建材を取扱い建設会社、設計事務所への営業活動に従事。 2004年シーネットネットワークスジャパン株式会社に入社し広告営業に従事した後。株式会社 ディー・エヌ・エーにて「モバゲータウン(現mobage)」の広告・企画営業を担当。2007年アジャイルメディア・ネットワーク株式会社入社。2009年3月取締役に就任後、2014年3月より代表取締役に就任。
企業やブランドの「熱量の高いファン=アンバサダー」とのコミュニケーション設計・支援、講演活動を行う。
茨城県 いばらきインターネットテレビ事業 検討委員会委員
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上田 怜史 • 2013年10月21日


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