監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第8回) ロイヤリティと推奨の関係(その1)

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。

本書では「認知」「顧客満足」「ロイヤリティ」「推奨」についての興味深い解説があります。近年注目されている、その新しい課題についてお伝えします。

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■認知から推奨

“推奨は今やマーケターにとって最も重要な課題となった。最近IBMが実施した世界的な調査で、各社のCMOがプライオリティ(優先課題)のトップに挙げたのが推奨だった。マーケティング調査会社で消費者のソーシャル・メディア活用を研究するモーティブ・クエストの創業者デビッド・ラブジョンズは「今や推奨が新たなマーケティングのゴールポストになった」と語る”

以上は本書からの抜き出しです。そして今回のイラストはその図説です。つまり今やマーケティングの最優先課題は「推奨」である、というのです。

もちろん、まずは「認知」がなければ始まりません。より多くの潜在顧客に商品やブランドを知ってもらうことが、商品を購入してもらう第一歩となります。本書ではアンバサダー・マーケティングが成立する大前提として、商品やブランドに関する「認知」が繰り返し出てきます。残念ながら知られていない商品やブランドには、そもそも熱きファンが存在していない可能性も高く、推奨やクチコミに向いていないということでしょう。

ただし、ソーシャルメディアの時代には、「認知」だけでは商品やサービスの購入につながらないと本書は説きます。消費者が購入を決定するうえでは、広告よりも「推奨」のほうがはるかに影響力は大きい、またよく知っていても友人には絶対に薦めない商品やブランドはたくさんある、と続きます。

確かにその通りでしょう。普通に暮らしていれば、知っている商品は山ほどありますが、友人におススメしたくなる商品というのは、ごく限られた一部のものに過ぎません。まずは自分が心の底から満足して納得できる商品、実際に使ってみて本当にいいもの、使わない生活など考えられない、というレベルに達しなければ推奨に至らないのは当たり前だと思います。

■顧客満足度を高めても推奨にはつながらない

では従来のマーケティングで重視されてきた「顧客満足度」に関しては、どう捉えたらいいのでしょうか。

「顧客満足度」とは、そもそも1980年代から提唱され始めた概念で、人は商品を購入する際、そこに何らかの満足を感じたときに購入するとの考え方で、その満足度を引き上げることを目標とする戦略です。

このマーケティングのゴールは、「顧客満足度」を高め、その上位概念である顧客との「ロイヤリティ(忠誠心)」を築き、継続的な売り上げに結びつける、というものです。この考え方に則り、企業は「顧客満足度」を高めるためのあらゆる手段を講じ、また、その指標を定期的に測るための調査に大量の資金を投じてきました。

この調査じたいは企業のサービス改善や、次期商品開発に結びつくヒントが得られることもあり、有意義な場合が多いと思われます。
しかし本書によれば、残念ながら顧客満足を高めるさまざまな施策は、必ずしも「ロイヤリティ」や「推奨」に直結しないものであり、顧客満足と売上成長にはほとんど、あるいはまったく相関がないことが研究で明らかになっている、と説かれています。

「顧客満足度」を高めても、それが「推奨」にはつながらない、とはいったいどういうことなのでしょうか。従来のマーケティングで提唱されてきたそれらの施策の果たして何が問題なのでしょうか…。続きは、次回をお楽しみに。

本書「アンバサダー・マーケティング」は、精緻な学術書ではありませんので、多少なりとも強引なところがあります。また現実に即し、時代の風をつかむことを重視しているので、従来のような積み上げ式とは違った発想や提案も多く見受けられます。しかし、ここには参考になる視点が数多く紹介されています。

考えてみれば、インターネットやソーシャルメディアの急激な発展なども、ある意味、突発的に生まれた環境変化であり、生活に密着して発展してきたマーケティングが、そういった外部要因に影響され、時代とともに変化し、前時代の当たり前が次第に陳腐化していく、もしくは当初の意味が希薄になっていく、というのは、ある意味当然のことだと思われるのですが、いかがでしょうか……。

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 アンバサダー・マーケティング

ロブ・フュジェッタ
日経BP社

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藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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藤崎 実 藤崎 実 • 2014年2月18日


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