監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第9回) ロイヤリティと推奨の関係(その2)

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。

本書で解説されている「認知」「顧客満足」「ロイヤリティ」「推奨」についての続きです。とても興味深い視点をお伝えします。

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■ロイヤリティと推奨の関係

従来のマーケティングでは企業と顧客の関係における最高の目標は「ロイヤリティ」だと考えられてきました。
つまり「常にロイヤリティを意識し、顧客満足度の向上につながる施策を継続的におこなうことが、売上に結びつくリピート顧客を増やし、ロイヤリティを向上させることになる」という考え方です。

例えば「パレートの法則」によれば、20%の優良顧客がその企業の80%の収益をもたらすとされています。従って商品を購入したり、サービスを受けたりした顧客の満足度を高め、そのことにより優良顧客を獲得していくことが大切だとされ、企業はこのロイヤリティ・プログラムの推進に今まで大量の資金を投じてきました。

ただ、ちょっと乱暴な言い方を許してもらえれば、この戦略のゴールは要するに顧客の「リピーター化」と言えます。この考え方じたいは間違っていないと思うのですが、では実際にどのような施策を通じて顧客満足を高めるかというと、少し話が模様変わりしてきます。それは多くの場合、ポイントプログラムであったり、マイレージプログラムであったり・・・。要するにサービスやポイントの乱発にもなりかねない、という現実的な側面があります。

それらは確かに顧客の満足度をあげることになり、顧客のリピーター化に貢献するかも知れませんが、果たして、そこからの拡がりは期待できるのでしょうか。そのリピート顧客は、その商品やブランドやサービスを、本当に心から好きになってくれているのでしょうか?顧客満足度をあげるために企業から付加されるポイント獲得が目的になっている可能性はないのでしょうか。

これは自分自身に置き換えて考えてみればよくわかると思います。航空会社やスーパーやクレジットカードのロイヤリティ・プログラムのメンバーになっているのは、その方が、実際にオトクだからであり、そうしたサービスや企業を友人に熱意をもって推奨するかどうかはまた別、ということではないでしょうか。

■推奨は、ロイヤリティを測る本当のリトマス紙

では、ここで順番を逆に考えてみたらどうでしょうか。本書では、 “「推奨」は、ロイヤリティを測る本当のリトマス紙といえる” と述べられています。

つまり、企業からのポイント付加やマイレージプログラムとはまったく関係なく、商品やブランド、企業やサービスなどを純粋に「推奨」する意思があるかどうかに起点を置いて、物事を捉える視点です。

友人に何かを推奨するというのは、自分の評価や信頼にかかわることです。確かにこれはハードルが高い行為ですが、この精神的なつながりを企業と顧客の間に結ぶことができれば、これは確かに何よりも強い「ロイヤリティ」ではないでしょうか。そしてこの推奨の意思を持った顧客こそがアンバサダーだと本書では語られています。

そして驚くことに、 “頻繁に商品を購入する顧客がアンバサダーとは限らない。” とも述べられています。これも実感値で考えると、素直に理解できます。つまり、自分が心から推奨に値すると思っているというのは、要するに愛情の深さの問題なので、購入頻度や、ロイヤリティ・プログラムにおけるポイントの点数や、損やオトクとは関係ないというわけです。

「そのアイテムは1つしか持っていないけど大のファンで、そのアイテムについていつも言及している」、「1回しかそのサービスを利用していないけど、そのサービスが忘れられずに、たびたび推奨する」というのは、よくあることです。

もちろん本書でも「ロイヤリティ」を向上させる必要性や価値に異論はないようです。ただし、従来型の方法論であるロイヤリティ・プログラムの懸念点を本書は指摘しているのです。

そして、ある意味トップダウン型とも言える発想で、顧客の「推奨意思」をいかに獲得し、高めるかが「ロイヤリティ」獲得につながるのだ、と提案しています。以上が、「推奨」が今後のマーケティングの最優先課題であると述べている所以です。

本書ではこの項は、以下のように締めくくられています。
“顧客にアンバサダーになってもらうということは、家族、友人、知人、そして何千、何百万人というネット上の買い手に、ブランドや商品をおススメしてくれる営業スタッフを手に入れることにほかならない”

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

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藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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藤崎 実 藤崎 実 • 2014年2月25日


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