監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第2回) アドボケーツとアンバサダーについて

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。この本は、近年アメリカの広告やマーケティング業界で注目されているキーワード、「ブランド・アドボケーツ」について初めて書かれた本(※)が原書です。

前回に続いて、今回は原題名の「アドボケーツ」と、翻訳本の題名「アンバサダー」の関係について触れたいと思います。

※原書名「Brand Advocates: Turning Enthusiastic Customers into a Powerful Marketing Force」(米国にて2012年7月31日発行)

 

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■アドボケーツの翻訳で大激論!

まず「アドボケーツ」(Advocates)ですが、これは支持者たち、擁護者たち、提唱者たちという意味で、市民運動や社会活動、看護や福祉分野、例えばユニセフの活動などで使われることが多いようです。(Advocacyは、支持・擁護・提唱の意味)。

そこから転じて近年、アメリカの広告やマーケティング業界でアドボケーツといえば、「特定の商品やブランド、サービスについて自ら発信し・推奨する熱烈なファン」という意味に使われているようです。

では、タイトル名でもあるこの「Brand Advocates」を何と訳すか。これが大きな問題でした。

原題をそのままカタカナにした「ブランド・アドボケーツ」や、マーケティング分野だとわかるコトバを付け加えて「アドボケーツ・マーケティング」などと翻訳すべきだという意見がある一方、そこには大きな不安があったからです。

それは日本人に馴染みがない「アドボケーツ」を使って、すぐに内容を理解してもらえるのか、というものでした。「アドボケーツ」は、何だかアボガドみたいですし、アメリカのマーケティング事情に詳しい人だけにわかる、ちょっと通めいたコトバのようにも思えます。

要するに、あまり聞いたことがない「アドボケーツ」を使って、この新しい概念がどこか遠いものに感じられてしまうと、大変もったいないのではないか、という懸念でした。

翻訳チームとしては本書の紹介を通じて、「ブランドアド・ボケーツ」の概念が身近なものとして日本のマーケティング業界に定着して欲しい、もっと普通に使われるようになって欲しい、という思いがありました。

結局、この翻訳に関しては議論に議論を重ねることとなり、出版社の方々にもアドバイスを頂き、最終的には「ブランド・アドボケーツ」を、ブランドの熱烈な支援者という意味に使われることの多い「アンバサダー」というコトバに置き換えて翻訳することとなりました。

実は出版された現在でも、アドボケーツとアンバサダーでは意味が違いますよね、同じではありませんよね、というご意見を頂くことが多いのですが、そういった経緯があったのでした。

余談ですが、例えば日本ですでに定着している「アルファーブロガー」は和製英語で、英語圏では、「Aリスト・ブロガー(A list blogger)」や、「Aリスター(A lister)」と呼ばれています。

よくTVのクイズ番組で出題されますが、同様に、「ベビーカー」や「サラリーマン」「OL(Office lady)」「ノートパソコン」「オートバイ」「ウインカー」「ガードマン」「キーホルダー」「フリーダイヤル」なども完全に和製英語です(苦笑)

というわけで、「アンバサダー・マーケティング」について、先行する英語圏での情報を探したい方は、ぜひとも「Advocates」をご参照頂ければと思います。

 

■日本で使われてきたアンバサダーとの違いにご注意!

ここで注意が必要なのは、この本に登場する「アンバサダー」と日本で以前から使われてきた「アンバサダー」では、大きく違う点があることです。

まず日本で使われてきた「アンバサダー」について軽く触れます。

日本ではアンバサダーは一般的には「大使」と翻訳されることが多く、著名人や芸能人が、企業やブランド、観光地などの宣伝を目的として、依頼主から任命される場合に使われることが多いようです。

また親善大使、交通安全大使などとして、タレントや文化人にキャンペーンのシンボルになってもらう場合にも、アンバサダーと呼ぶことがあります。

最大の違いは、日本で呼ばれているアンバサダーは「報酬をもらっている」のに対して、この本で紹介されているアンバサダーには「報酬がない」点です。

またもうひとつ。日本で呼ばれているアンバサダーには、ある一定の契約が存在し、アンバサダーを引き受ける期間が決まっている場合が多いという点です。(だから報酬があるとも言えます)。

しかしこの本では、アンバサダーによるブランドや商品、サービスへの愛情は一生続くこともある、と指摘されています。つまり、報酬とは関係ない無限の愛情で、ブランドや商品やサービスに接するのが本当のアンバサダーというわけです!

ソーシャルメディアの登場で顕在化し、大きなパワーを持つようになったアンバサダーの存在を無視することはもはやできないでしょう。アンバサダーについて初めて書かれた書籍であるこの本からは、多くのヒントが見つけられると思います。もちろんアンバサダーの見つけ方、アンバサダーとのつき合い方もこの本には詳しく解説されています!次回はこの本の特徴と著者についてです。お楽しみに。

 

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

Author Profile

藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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書籍

藤崎 実 藤崎 実 • 2013年10月15日


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