監修者が語る、書籍「アンバサダー・マーケティング」(第3回)リレーションシップ・マーケティングと著者の関係。

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好評発売中の書籍『アンバサダー・マーケテイング』を監修した藤崎実です。
この本は、近年アメリカで注目されているキーワード、「ブランド・アドボケーツ」について初めて書かれた本が原書です。今回は著者の興味深い経歴について触れます。

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■著者のロブ氏と、アップルと、リレーションシップ・マーケティングの関係。

本書の著者ロブ・フュジェッタ氏は、長年シリコンバレーで活躍し、ソーシャルメディアを活用したマーケティング支援会社・ズーベランス社を創業した人物です。その経歴は大変おもしろく、ズーベランス社創業に至る経緯を知ることで見えてくることがありますので、ご紹介します。

もともとロブ氏はレジス・マッケンナ社のパートナーで、他にも3つの会社で最高マーケティング責任者(CMO)をつとめた、いわばマーケティング実務のプロフェッショナルです。

さて、ここで登場するレジス・マッケンナ社ですが、この会社はインテルやアップルなどのハイテク企業を成功に導いたマーケティング・コミュニケーションの会社として有名です。この伝説的な会社でロブ氏はアップルを担当。現在に至るアップル躍進の立役者として貢献した経歴を持ちます。

ご存知のように、アップルはユーザーの立場に立った独走的な製品をつくることで有名ですが、創業当時は大変苦戦した歴史があります。その当時のことです。アップルの哲学と製品づくりの関係をどう位置づければいいのか。アップルをどう世の中へアピールしていけばいいのか。ロブ氏が熱きファンのパワーに着目するようになった原点がここにあるのは、想像に難くありません。

ここでさらに深堀りし、レジス・マッケンナ社のパートナーである、もうひとりのマーケティングコンサルタント、レジス・マッケンナ氏に着目すると、また新たな発見が見えてきます。

レジス・マッケンナ氏はシリコンバレー最高のマーケターとして名を馳せた人物ですが、その経験から1992年に「Relationship Marketing」という本を出版します。

そうなんです。近年マーケティングの世界で最も注目されている「リレーションシップ・マーケティング」というキーワードを明確なコンセプトとして打ち出した人物が、ロブ氏とパートナーだったレジス・マッケンナ氏というわけです。

この本は日本でもダイヤモンド社から1992年に「ザ・マーケティングー『顧客の時代』の成功戦略」という題名で翻訳出版されています。

ちょっと余談ですが、ここで素朴な疑問が生まれます。なぜ日本語のタイトルを「リレーションシップ・マーケティング」にしなかったのでしょうか…。

これはあくまで想像ですが、1990年代はまだそのキーワードが出たばかりであり、現在のように一般的なマーケティング用語として根付いていない状況があったのではないでしょうか。従って、馴染みのないワードをタイトルにするのを避け、肝心の内容は、副題に込めたのではないでしょうか。もちろん、このあたりは出版社の意向もあったと想像します。(今回のアドボケーツとアンバサダーの関係に近いかも知れません)

■新しいことを始めるには、新しい道具が必要

こうした背景を知ることで、ロブ氏はレジス・マッケンナ氏が打ち出した「リレーションシップ・マーケティング」の考え方を継承しつつ、自らのマーケティング理論を育てていったのではないか、ということが想像できます。

そしてある時、ロブ氏は今までいなかった新しい消費者の存在に気づくことになり、その確信と仮説を実証するために2007年にズーベランス社を創業します。

そうです。その新しい消費者こそが、本書で解説されている「アンバサダー」であり、つまりズーベランス社とは、「アンバサダー・マーケティング」を実践するためにつくられた会社、というわけです。

前衛的なパフォーマンスで有名なアーティストのローリー・アンダーソンさんは、「アートを作りたければ、まずはアートを作る道具を手に入れなければならない」と言ったそうですが、なるほど、その言葉通り、ロブ氏はソーシャルメディア時代の新しいマーケティングの実践には、そのための会社が必要だと考えたわけですね。

いかがでしょうか。「アンバサダー・マーケティング」(原題ではブランド・アドボケーツ)というといかにもキーワード先行の流行りものの印象がありますが、ロブ氏が辿った系譜を見ると、その本質は意外と骨太で、“リレーションシップ・マーケティング×ソーシャルメディア”と捉えることができるかも知れません。

数々の経験を経て、ロブ氏がたどり着いたのが消費者のパワーに着目したマーケティングだということが大変おもしろいと思います。時代の最先端の事例がこの本には満載です。

監修者:藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。クリエイティブディレクター。AMN コミュニケーションラボ主宰。日本広告学会クリエーティブ委員、WOM マーケティング協議会理事、東京コピーライタースズクラブ会員。青山学院大学(2012)、学習院大学(2013〜)非常勤講師。カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など受賞多数。

 

アンバサダー・マーケティング
ロブ・フュジェッタ
日経BP社

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藤崎 実
藤崎 実
藤崎実 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 クリエイティブディレクター
(プロフィール) 博報堂、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODOでの仕事を経て、アシャイルメディア・ネットワーク勤務。AMN コミュニケーションラボ主宰。多摩美術大学、日大商学部 非常勤講師 ◎日本広告学会クリエーティブ委員、産業界 評議員 ◎日本マーケティング学会/日本広報学会会員 ◎WOMマーケティング協議会 理事/事例共有委員会委員◎東京コピーライターズクラブ会員 ◎青山学院大学、学習院大学 非常勤講師【受賞歴】カンヌライオンズ、OneShow、クリオ賞、NYフェスティバル、reddotデザイン賞、iFコミュニケーションデザイン賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォード、東京インタラクティフブアドアワード、ACC賞、電通賞など多数。
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藤崎 実 藤崎 実 • 2013年10月30日


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